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2015/09/16

SSV・山崎編- don't breathe a word of this to anyone -

現代パロ。崎千。バレンタイン2011「SSVシリーズ」。


夕暮れのオレンジ色が、校舎を柔らかく照らす放課後。
俺が、山南先生に保健委員の日誌を渡す為、保健室のドアを開けようとした時だった。
「あーあ。せっかく共学になって、千鶴も入学したってのにさー。なんっで、バレンタインを禁止にしちまうかなー!?」
「ホント…土方さんの僕達に対する嫌がらせも、ここまで来るとただの職権乱用でしかないよね。これはもう、仕返しの一つや二つしても、全然アリだと思うんだけど。」
俺がいる廊下の先にある十字路の左側には、二階へと続く階段がある。そこから、不服そうな顔でぶつぶつと文句を言う一つ年上の藤堂さんと、黒いオーラをまとって楽しそうに笑う沖田さんが降りてきた。話題は、本日の朝礼で言い渡された「バレンタイン禁止令」についての文句に他ならない。

「生徒間の菓子類の交換・配布の一切を禁ずる」

今日この話題についての愚痴を耳にするのは、もう何度目だろうか。薄桜学園は去年まで男子校だった為、先輩諸氏のバレンタインに対する過度な期待は、察するに余りあると思う。
つまり、去年まで共学である中学に在籍していた俺達一年生は、八つ当たりの的となり、一年生の男子は我先にと学校を後にしていた。
今あの人達と顔を合わせると、確実に面倒な事になりかねない―――そう思い、俺はそっと保健室のドアを開けて素早く中へ入った。
ツンとした消毒液や薬品の匂いが混ざる、清浄な空気。山南先生は席を外しているらしく、室内には誰もいないようだった。
ドアのガラスから見えないように屈みこみ、俺はドア越しに部屋の外の様子を伺う。すると、いつも教室の隣の席で聞く声が聞こえてきた。
「あんた等…いつまでそんな事でブツブツ文句言ってやがるんだよ。校則なんだから、仕方ねーだろ?」
「おっ、龍之介じゃん!何お前、今から帰んのか?」
パタパタと賑やかに井吹へ駆け寄る足音と、その後に続くペタペタと面倒くさそうに歩く足音。二人は、良い玩具を見つけたようだった。
「いや、今からバイトへ行くところ。今日テストだっただろ?いつもより早く終わったから、変に時間が空いちまってさ。外で時間潰すと金がかかるから、教室で時間潰してたんだよ。」
井吹は両親を亡くしていて、奨学金でこの学校に通っている。何でも、この薄桜学園のOBでありPTA会長でもある地元の名士、芹沢さんの元で世話になっているそうだ。本人は「世話にはなってるけど、犬呼ばわりされるのは気に食わない」と不服そうだったが。
「つーか、龍之介。お前は良いよなー、幸せなバレンタインを送っててさ。島原女子に、かっわいい彼女がいるんだもんな!」
「はぁっ!?かっ、彼女!?」
「へぇ…井吹君、彼女いるんだ?知らなかったよ。」
沖田さんの怜悧な声に一瞬びくっと怯んだが、井吹に彼女がいる事を知らなかった俺は、思わずドアに耳をそばだてた。あの井吹に彼女がいる…俄かには信じがたい話だった。
「隠したって無駄なんだからな、龍之介!オレ、ばっちり見たぜ!お前昨日の日曜日、駅前でその子とデートしてたろ!?確か…濃いめの茶色い髪の子で、髪を頭の上でくるんと丸めてまとめててさ。グリーンのコートと白いマフラーしてたその子と、駅前のカフェに入ってっただろ!仲良さそーに、手なんか繋いじゃってさー。良いよなー!」
「!!」
井吹の、息を飲む気配。藤堂さんが見た二人は、井吹と彼女で間違いないようだ。
「い、いや、鈴子…じゃなくて、あいつは、そういうんじゃねーんだよっ!ただっ…!」
「へぇ?鈴子ちゃん…っていう名前なんだ?」
「えっ、あっ…!?い、いや、だから、その…!沖田、何でにじり寄ってく…うわぁっ!?」
「これはちょっと、詳しい話を聞かせてもらわないとね?ほら、そろそろバイトの時間でしょ?最近は物騒だからさ、バイト先まで送ってあげるよ。君、喧嘩弱いし。」
「あ、じゃあオレもついていこうっと!ボディーガードしてやるよ、龍之介!」
「ちょっ…女じゃあるまいし、そんなもんいらねーよ!っつか、離せよ、沖田っ!!」
井吹の必死の声も虚しく、藤堂さんと沖田さんの楽しそうな声にかき消されるように、三人の気配が遠のいていく。
そういう態度をとるから、あの人達に揶揄わられるんだぞ、井吹……。
明日、教室で会った時に忠告してやろうと思ったが、その忠告の効き目があるかどうかも怪しく思えた。おそらく井吹の反射的なリアクションの良さは直らないだろうし、沖田さんのあの性格も直りはしないだろう。
小さくため息をついて、屈んでいた身体を起こして立ち上がった時だった。


「…ん……。」
ベッドを囲んでいる白いカーテンの先から、誰かの声が聞こえた。
人がいたのか…?
「あ、あれ…今、何時……?」
小さく聞こえた独り言は、この学校の唯一の女子生徒・雪村君の声だった。
体調が悪かったのだろうか?
彼女に「大丈夫か?」と声をかけようと、カーテンに近づいた瞬間。
「きゃあっ、もうこんな時間っ!!」
バサバサと音がして、閉じられていたカーテンが勢い良く頭上のレールを走る。その瞬間、手を伸ばせば触れられそうな位の距離で、シャツのボタンを開けてリボンを外し、襟元を大きく寛げた雪村君が現れた。
!?
「ゆっ…!?」
「えっ…や、山崎さん!?」
彼女は髪を直していた手を止めて、呆然とした顔で俺の顔を見つめている。
「どうしてここに…あ、保健委員でしたっけ。保健室にいても、別におかしくないですよね。」
納得した彼女は、俺の目の前で寝乱れた格好のまま、うんうんと可愛らしく何度も頷いている。
…いや、そんな事は良いから。
「私、ちょっと体調を崩してしまって、保健室で寝かせてもらっていたんです。ちょっと休んだら帰るつもりだったんですけど…昨日ちょっと夜更かししちゃったので、ついぐっすり眠っちゃいました。山崎さんは―――」
いや…だから、そんな事はどうでも良いから!
ベッドの脇に置かれていた自分の荷物を手に、デスクや薬品棚のある広い場所へと歩き出そうとする彼女に、俺は「ゆ、雪村君!」と声をかけた。
「はい?」
「ひ、非常に言いにくいんだが…とりあえず、そのカーテンのエリアから外へ出るのは、ちょっと待った方が良い。ちゃんと…色々確かめてから出るべきだと、俺は思う。」
「へっ?確かめるって、何を―――…きゃあっ!?」
俺が明後日の方向へ視線を逸らしたまま、出来るだけ遠まわしに事情を知らせると、雪村君はやっと現状を理解してくれたようだった。
さっきよりも勢い良くカーテンが閉められ、プチプチとボタンを留める音と、シュッとリボンを結ぶ音が静かな室内に響く。
俺は、ふう、と軽くため息をついた。
…一体何の拷問だ、これは。
運が良かった…と、言えなくもないが―――いや、それは雪村君に対して失礼だろう。
こんな事が沖田さんや斎藤さんにバレたら…と思うと、背筋が寒くなった。とはいえ、彼女がこのような話を自らする事などない筈だろう。つまりこの秘密は、確実に守られるに違いない。
凝視した訳でもない筈なのに、俺の脳には彼女の白い首元や鎖骨のあたり、胸元…などが鮮明に記憶されてしまっていた。
思わず罪悪感を覚えたが、俺も健全な男子なので、そのあたりは無理やり「運が良かった事にしよう」と自己解釈した。

「あ、あの…す、すみませんでした……」
カーテンをするすると開けて、身なりを整えた彼女が真っ赤な顔でペコリと謝ってくる。居た堪れない微妙な気まずさに、俺が「いや」と一言だけ返した時。

ぐぅ。

「…」
「…」
俺の腹が鳴った音だった。
更に居た堪れない気持ちになって、この照れ臭さとどうしようかと俯いて悩んでいると。
「ふふっ…」
もう堪え切れないという顔で、彼女が口元を押さえて小さく笑い出した。
あ、笑った―――。
室内の空気少し和らいだ気がしてホッとしていると、雪村君は自分のカバンの中から綺麗にラッピングされたカップケーキを出してきた。
「山崎さん、おなか空いてるんですよね?よかったら、どうぞ。」
にこりと華やかな笑顔で差し出されたケーキに、思わず手を伸ばしかけた時、ハッと今日の禁止令を思い出した。
「いや…!これは、あれだろう?バレンタインの―――」
「しっ。」
俺の問いかけを遮って、彼女は自分の小さな唇に細い人差し指を当てた。
「これは、さっきの…お礼です。実際に私、すごく助かっちゃいましたから。山崎さんが言ってくれなかったら、たぶん、あの……。」
彼女は視線を左右に泳がせながら、真っ赤な顔で言いよどんだ。確かに俺が言わなければ、おそらくあのあられもない姿で廊下を歩いたに違いない。
「…じゃあ、お礼として受け取る事にしよう。ありがとう。」
「はい!」
彼女は嬉しそうに微笑むと、「夕飯を作らないといけないので」と足早に保健室を出ていった。
室内に残されたのは、俺とさっき彼女からお礼の品としてもらったカップケーキ。
「これも、抜け駆け…という事になるのだろうか。」
誰もいない保健室で独りごちたが、答えが返ってくる筈もない。
まぁ、良いか―――。
俺は「お礼」を自分のバッグの中へと押し込むと、日誌をデスクの上に置いて保健室を出た。


-了-

――― あとがき ―――
このお話は公式サイトで「クリスマス禁止」というお話があったので、「バレンタインも禁止なんじゃないの!?」と思ったのが、「SSV」を作ったきっかけです(当時はSSLゲーム化の話すらありませんでした)。

SSLでは山崎さんは二年生なのですが、沖田さんや平助君の事をどんな風に呼ぶのかが謎だったので、しっくりくるように一年生にしちゃいました。
井吹君は弄りやすいので、書いていてとても楽しかったですw

千鶴ちゃんとの保健室で「ばったり」のお話ですが、「保険委員の彼なら無理がないかな?」と思ってこの展開にしました。
彼女はそそっかしいところがあるようなので、おそらくああいうハプニングもあるんじゃないかと;
手作りチョコは、「お礼」として受け取ってもらう事にしました。リアルに想像すると、男子が多いこの学校で、放課後にあの格好で外に出るのは非常にまずいと思います;;;
サブタイトルの「don't breathe a word of this to anyone」ですが、「秘密にしておいてください」という意訳です。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : SSV

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となみかや

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薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
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※現在、WEB拍手は3作品です。
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