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2015/09/02

必殺!花盗人の仕置き人!!

現代パロ。土千。「敵」とみなした相手には、一切容赦しない土方さんのお話。


週末の夜。
 駅前は、ひどく混雑していた。

 (あいつは…あぁ、あそこか)

 千鶴は、会社の同僚らしき女と、その隣に酒に酔った赤い顔の男と楽しそうに話している。

 (奴…か?)

 そう思った瞬間、俺の頭の中がひゅうっと一気に冷たくなった。


 千鶴に内緒で連絡をくれた千姫によると、最近転職してきた新入社員で、総務課の千鶴を見て一目惚れした奴がいるという。
 周りの奴等が「彼女は無理だ」と遠回しに言ったらしいが、無駄に向上心があるのか野心があるのか、それとも単に空気が読めねぇ奴なのか。
 そいつは、「山は高い方がいい」とかぬかしやがったそうだ。
 奴を歓迎する飲みの席でも、「略奪愛上等!たとえ高嶺の花でも、オレはチャレンジ精神に生きる!」と公言しやがったらしい。



 つまり――――俺の「敵」って訳だ。



 千姫は、「敵」の名を教えちゃくれなかった。
 別部署の人間とはいえ、さすがに同僚の身を案じたのか、「千鶴ちゃんの事は大事に思っているけど、私、人身売買の趣味はないの」だと。人聞きが悪いにも程がある。
 とりあえずアドバイスはもらったが、「貴方なら、すぐに「あの人だな」って、分かると思うわよ」という酷く曖昧なものだった。

(ったく…高い山が好きなら、富士山かモンブランか、マッターホルンにでも登頂してきやがれってんだ)

 俺が、吸っていた煙草を携帯灰皿の中で完全にもみ消して、黒いロングコートのポケットの中へと仕舞っていた時だった。


「千鶴、二次会はどうする?たまには一緒に行く?」

「そうですよ、千鶴さん!一緒に行きましょうよ!オレ達と一緒に!ねっ!?」


 同僚の女の誘いを「良いタイミングだ」と思ったのか、そいつも調子に乗って誘いをかけている。

(…間違いねぇ、奴だ)

 千鶴に対するそいつの距離の取り方は、いつもの事なのかそれとも酒に乗じた「どさくさに紛れて」って奴なのかはわからねぇが、酷く近いものに感じられた。

(気安くあいつに近づいてんじゃねぇよ)

(ったく、あの野郎…「千鶴さん」だと?)

 でっかい瞳をぱちぱちさせて、二人の顔を見比べながら千鶴が、「私は…」と口を開きかける。

(…今だな)

 俺は、寒さで冷たくなった空気を、すぅっと小さく吸い込んだ。



「千鶴!今、帰りか?」


 俺の声にぴくんと反応して、あいつが「えっ?」と振り向く。
 それと一緒に、その場にいた団体のメンバー全員も、ザッと一気に俺の方を振り向いた。

(何で他の奴等まで、振り向いてんだ)

(…まぁ、ギャラリーは多い方が、手っ取り早くて良いがな)

「と、歳三さん!?」

 千鶴は驚いた顔で大きな声を上げた瞬間、ハッと我に返って慌てて口を塞いだ。
 恥ずかしさで顔を赤らめながら、千鶴は「ごめんなさい、ちょっと…」と両側にいる同僚の女と奴に向かってぺこりと軽く頭を下げると、まるで飼い主を見つけた子犬みてぇに、たたっと小走りで駆け寄ってきた。

「ど、どうしたんですか?確か今日は、皆と飲みに行くって……。」

「おぅ。さっきまで、原田や新八の奴と一緒に飲んでたんだけどな。あいつ等が、キャバクラとかに行きたがってたから、放って帰ってきた。…お前は?今日は、会社の忘年会じゃなかったのか。」

「あ、はい。今、一次会が終わったんです。それで、二次会の話になって…。」

 千鶴がチラリと視線を向けた先には、小さな団体になっている千鶴と同じ会社の奴等が、楽しそうな顔で「どーもー」とか「いつもお世話になってますー」とか、いかにも酒が入っているって面でゆるりとお辞儀してくる。
 俺はそいつ等に向かって小さく会釈をすると、目の前にある小さな頭をぽん、と撫でた。

「…そうか。じゃあ俺は、先に帰ってるからな。俺の事は構わねぇから、たまにはゆっくりして楽しんでこい。」

「いえ、私も帰ります。少し飲みすぎちゃいましたし。」

 千鶴は俺に向かってにこりと笑うと、会社の奴等にぺこりと頭を下げた。

「…皆さん、すみません。申し訳ありませんが、お先に失礼します。彼と一緒に、帰りますので。」

「おい…もうすぐ「彼」じゃなくなるだろうが。俺としちゃあ、ここは「主人」って言ってもらいたかったんだがな。」

「なっ…!ま、まだ、違いますっ!」

 真っ赤になって否定する千鶴を見て俺が、「大して変わらねぇだろ」とクスクス笑っていると。



「主人っ!?」



 さっき、こいつの事を「千鶴さん」と名前で呼んでいた身の程知らずの馬鹿が、俺達の会話の端に上がった言葉に驚きの声をあげた。

(…やっぱり、奴か)

 俺は標的相手を確信すると、千鶴の隣にいた場所からゆっくりと進んで、そいつの目の前に立った。
 身長は俺と大して変わらねぇが、えらくガリガリとした痩せぎすの体型だ。新八辺りが背中をばしっと叩いたら、目の前のアスファルトにゴロゴロッと転がっちまいそうな位頼りねぇ。

「初めまして、土方と申します。いつも、「千鶴」がお世話になっているそうで。」

 俺は口元に笑みを浮かべながら、そいつの目の前にスッと右手を差し出した。
 眼光を鋭くさせたまま笑顔でいる俺からの視線に、奴は自然と「敵意」を感じたらしい。
 どう返していいかの分からないらしく、複雑そうな表情を浮かべたまま、「えっ…あ、ど、どうも」と曖昧な挨拶をしながら、俺の握手に応えようと手を差し伸べてくる。

「どうも。よろしく。」

「痛っ…!?」

俺は、「挨拶の握手」で使う数倍の握力で、そいつの手をギリッと握り締めた。ふいをつかれた奴は、痛みと驚愕で、俺の顔から視線を外せなくなっている。

(…まぁ、俺が、そうさせているんだがな)

「こいつ…千鶴の事ですが、来月からは「土方」の姓になりますので。そのまま、「千鶴さん」…って、呼んでやって下さい。その呼び名なら、「雪村」の姓から「土方」に変わっても、支障はないですから。俺は、別に構いませんので。今後とも、こいつの事をよろしくお願いします。」

(てめぇがこいつの事をどう呼ぼうと、こいつは俺の物なんだよ)

(身の程知らずも大概にしとけ)

 俺は視線だけで奴にそう語ると、「あぁ、失礼」と言って、するりと手を解放してやった。
 怯えた瞳で何度も小さく頷いている男の顔を、同じ会社の奴等が「だから無理だって言っただろ?」と言いたげな顔で苦笑している。
 千鶴だけが、きょとんとした顔で俺とそいつのやり取りを見ていた。

(…よし、これで解決したな)

 俺は勝利をの笑みを浮かべると、千鶴の肩に手を乗せながら「それでは、失礼します」と挨拶の会釈をして、悠然とした足取りでその場を去った。



十数分後。
 クリスマスシーズン特有の、きらめくイルミネーションをぼんやり眺めながら歩いていると、俺の隣を歩いていた千鶴から「あの、歳三さん」と声をかけられた。

「何だ?」

「あの…もう少しだけ、「彼」でいてもらっても……いいですか?」

「はっ?」

(まさか…さっきの事で、入籍を延期するとか言い出すんじゃねぇだろうな)

 オレが内心ひやりとしながら「どういう意味だ?」と聞き返すと、千鶴は白い頬を寒さで赤らめながら静かに口を開いた。

「来月になったら…それこそ私が死ぬまでずっと、歳三さんは「私の旦那様」です。あ…いえ、そうなる事も、すごく嬉しいんです。だけど…「恋人の歳三さん」でいてくれる今も、すごく幸せなんです。上手く説明出来ないんですけど…「今」も、ちゃんと大事にしたいなって……。」

「!」

千鶴は、細い眉を下げながら「あの、駄目…ですか?」と小リスみてぇに小首を傾げて聞いてくる。
高校を卒業して、俺との仲が変わっても。綺麗な化粧の仕方を覚えて、「大人の女」になっても、この仕草は変わらねぇ。

(ったく…かなわねぇな)

「分かった。お前の言う通りにしてやるよ。」

 俺が頷くと、千鶴は「ありがとうございます」と礼を言って、照れくさそうに笑った。

(別に、呼び名なんて大した問題でもねぇ)

(恋人だろうと、旦那だろうと…俺が大事に思っている女がこいつだって事に、変わりはねぇんだからな)


 冬の寒い帰り道。
 吸い寄せられるように、互いに近づいて繋ぎ合った手は、俺達のこれからを示す「証」みたいに思えた。



-了-

――― あとがき ―――
このお話は、「無謀にも、千鶴ちゃんと同じ会社の奴が彼女にちょっかいを出そうとしてきたら!?」というまた妙なシチュが光臨したので書いたお話です。
「周りからも相手からもリアクション出来ない…!」という空気を作りたかったので、土方さんに決定w
今回も、大人げない残念なイケメンの土方さんとなりました(ファンの方、すみません)

 タイトルの「必殺!花盗人の仕置き人」ですが、以前から「花盗人」という言葉をつけたタイトルをつけたいなぁと思っておりまして。
丁度、「花盗人」=「無謀な輩」にするかと決めた瞬間、またも妙な光臨が来てしまいましてですね。
「あ、某時代劇風味にしてみたら面白くないか?w」という感じで書いていたら、もうギャグしかならずw;軌道修正、めっちゃ頑張りましたwww(土方ファンの方、ごめんなさい)
千鶴ちゃん関連で彼を怒らせると、おそらくこんな感じで大人げなくヤバイのではないかと思い、こんなサブタイトルにさせていただきましたw

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
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※現在、WEB拍手は3作品です。
龍鈴(薄桜鬼)/原千(薄桜鬼)/
薬研&光忠(刀剣乱舞)

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