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2015/09/02

やっと、会えた。-When reunited with me…?-

幕末設定。蝦夷地。千鶴視点。土千。ちょっと意地悪な大鳥さんが出ます。


建物の窓の中に映る、見覚えのある…影。
 さらり、とした黒髪の後頭部が揺れて、くるりと左側を向いた厳しいお顔が見えた。
 忘れるなんて到底出来ない…あの方の姿が私の視界に映った瞬間、胸の辺りがぎゅうっと強く掴まれたみたいに苦しくなった。

(やっと、お会い出来た…!)

 眉間の皺を深く刻みながら、あの方は近くにいた若い兵士に怒鳴り声を上げている。
 この蝦夷の土地でも、お仕事にとても厳しいご気性は変わっていないみたい。

(本当、お変わりないなぁ…)

 懐かしくて…嬉しくて、ふいに涙が込み上げてくる。
 潤んでぼやけてくる視界にはっと気がついて、私は慌てて上を向いた。

(まだ、泣いては駄目)

 私は灰色の混じった曇り空を見上げながら、ふるふると軽く頭を振って涙を閉じ込めた。
 この手の中にある書状を、大鳥さんから渡された時…私は一つ約束をした。
 それは―――…


『いいかい、雪村君。君が泣くのは、土方君の前でだけにしてやってくれたまえ。君を傍に置いていたかった癖に、やせ我慢をして「君を本土へ置いていく」と勝手に決めたのは、彼だ。君の泣き顔で困るのも、君から責められるのも、致し方ない事だと思わないかい?僕を利用してまで、君がここまで追ってこさせた報いを、彼は受けるべきだよ。』


 大鳥さんは、癖毛の髪を撫で付けると「これ位の意趣返しはさせてもらわないとね」と、悪戯っ子みたいに笑った。
 それは、まるで―――遠い日。
 京の屯所で少年のような悪戯をしてはあの方に怒鳴られていた、強くて優しいあの人のように…優しい瞳をしていた。



ひんやりとした空気の、初めて入る建物。
 板張りの廊下に、履き物の音が響く。

(履き物を履いたままで建物の中を歩くなんて…不思議な気持ち)

 入口でお会いした受付の方から教えられた通りに、建物の中を進んでいく。
 突き当りの廊下を左に曲がって、奥にある…右側のお部屋。
 足音を忍ばせて、茶色い洋物の戸の前にそっと立つ。
 戸の横には、見慣れた柔らかい字で書かれた…彼の新しい役職と名前が書かれていた。
 …すう。
 …はあ。
 目を閉じて、何度も息を吸って…吐く。
 私は、手の中にある書状をきゅっと握ると。

 こん、こん、こん。

 空いている片方の手で握り拳を作って、戸に軽く打ち付けた。
 このおまじないみたいなものは、お部屋の中へ入る際に西洋の方がするご挨拶。
 お店とかでする、ご機嫌伺いみたいなものなんですって。

(お返事が…ない?)
(聞こえなかったのかな…)

 意を決して、私がもう一度「のっく」という西洋のご挨拶をすると、戸の奥から不機嫌そうな…懐かしい声が聞こえてきた。

「何だよ、大鳥さん。忙しいから、いちいち戸なんか開けて応対なんかしてやらねぇぞ。開いているから、とっとと入ってきてくれ。」

(!!)

 ぶっきらぼうだけれど、親しい人にしか向けない…少しだけ、優しい声。

(本当だ…大鳥さんと、間違えてらっしゃる…!)

 ずっとずっと聞けなかった、「本物の声」が聞けた事。
 私よりもずっとずっと上手(うわて)な方へ「意趣返し」が出来た事に、私の胸の音がいきなり大きくなった。


『そうそう、雪村君。あと一つだけ。』
『はい?』
『僕はね、彼の部屋へ行く時、必ず握り拳の裏を使って「こんこんこん」と、戸を三回叩くんだ。』
『叩くんですか…?』
『そう。西洋の挨拶で、「中にいらっしゃいますか?入ってもよろしいですか?」っていう合図みたいなものさ。この合図はね、彼の部屋ではたぶん僕位しかきっとやらない。だから、君も同じようにやってみるといい。おそらく彼は、部屋に来た人間を僕と間違える筈だよ。』
『そんなに上手くいくんでしょうか…?』
『大丈夫。きっと上手くいくよ。僕が保証する。』


 書状を頂く時に教えてもらった…大鳥さんの「合図」は、本当だった。
 私は深呼吸をすると、戸についている「どあのぶ」という丸い部分に、ゆっくりと手をかけた。
 金具になっている所為か、汗ばんだ手にひんやりと馴染んで、私の手の熱を奪っていく。

(あと少し…)

 静かに。
 かちゃり、と、音がして。
 私は、ゆっくりと…戸を開けた。


 石みたいに固まった土方さんのお顔は…まるで、知らない男の方みたいだった。
 切れ長の瞳は、びっくりしたように見開いていて。
 薄めの唇は、少しだけ開いていて。
 さっきまで深く刻まれていた筈の眉間には、皺なんて刻まれていない。
 少しやつれた…少し色素の薄い頬が、少しだけ赤く染まっていて。

 私が一度も見た事のない…初めて見る、「土方歳三さん」の…お顔だった。


「雪村千鶴です。今日付けで、こちらの土方陸軍奉行並の小姓役を務めるため、お部屋へまかりこしました。」


(ずっとお会いしたかった)

(お会いしたかったんです)

(土方さん…貴方を、追いかけてきたんです)



-了-

――― あとがき ―――
このお話は、Twitterにて突発的に作ったお話を更に加筆修正したものです。
痩せ我慢している土方さんの背中を押してもダメだったので、大鳥さんは千鶴ちゃんの背中を押す事にしています。
タイトルの「やっと、あえた」はそのままですね。
サブタイトルの「When reunited with me…?」は「再び会えた時は…?」という意訳です。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

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となみかや

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薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
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※現在、WEB拍手は3作品です。
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