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2015/09/02

ジレンマ土方編・伍-There aren't any good words-

幕末設定。土千。 恋仲になる前の捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。



「…申し訳ございませんが、お断りします。」


 ―――千姫の、怜悧な言葉。
 正直断られるとは思っていなかった俺は一瞬だけ呆然としたが、はっと我に返るとすぐに居住まいを正した。

「…俺は、あんた達が千鶴に対して、身内に近い情を持っていると思ってたんだがな。そうでもなかった…って事か?」
「勘違いをなさらないで下さい。私は、あなた方新選組の協力には応じない…そう申し上げただけです。」
「…何だと?」

 俺からの皮肉にも何処吹く風といった千姫に、俺は眉を吊り上げる。
 君菊が「姫様」と不安げな声で問いかけると、千姫は君菊の顔をちらりと見て微かに微笑み、すぐに冷徹な表情に戻って正面へと向き直した。

「私達が彼女をあなた方に預けたのは、あくまでも彼女の意思を尊重したからです。決して、新選組の力量を信頼したからではありません。屯所へお邪魔した時も、「あなた方では彼女を守りきれない」―――そう申し上げた筈です。」

 新選組の力を下に見られるのは癪だが、千姫の言葉を否定する事は出来なかった。
 実際、風間の野郎に屯所を襲撃された事も一度や二度じゃねぇ。
 結果的に何とか千鶴を守りきれてはいるものの、煮え湯を飲まされる事が少なくない現状を考えると、安易に否定する事は出来なかった。

「私達は、あなた方が彼女を利用している今の状況を、正直不満に思っています。それでも彼女が自らの意志で動いているのなら…と目を瞑り、協力もしてきました。ですが―――今回については、話が別です。」

 俺からしてみれば、あいつを利用しているつもりなんかこれっぽっちもねぇ。
 だが、あいつの事を常に心配しているこいつ等からしてみれば、俺達があいつの気質を利用してこき使っているように見えちまうんだろう。
 …俺としては、あいつがしゃしゃり出てきたりなんかせずに大人しくしていてくれる方が、ずっとありがてぇんだがな。
 俺は心の中で悪態をつくと、「別とはどういう意味だ」と問いかけた。

「…分かりませんか?」

 千姫は呆れ顔で小さく呟くと、きっと俺の顔を力強く睨み付けてきた。

「土方さん。貴方は先程、「攫われたのは自分の責任だから、彼女を助けたい」…そう仰いましたね。」
「…ああ。それがどうした。」

 そもそも、こんな風に悠長に押し問答なんかしてる場合じゃねぇだろ―――苛立ちを必死で抑えながら俺がそう答えると、千姫はふふ、と小さく微笑した。
 何だ……!?
「それが、お断りをした理由です。「失態を演じてしまった分、何とか名誉を挽回したい」という、あなた方のお気持ちは分からなくもありません。ですが、「新選組の面子を守りたい」という矮小な目的の為に、私達が築いてきた角屋との信頼関係を壊してまで、あなた達に協力する義理などないと、申し上げているんです。」

 冷たいながらも気品の溢れた千姫の言葉に、俺は石のように固まった。



 ―――正論、だった。
 俺が言った言葉は、「角屋で客が入っている部屋を調べたいから、その手引きをしてくれ」という言葉と、何ら変わりのねぇものだ。
 どんな方法を使ったのか知る由もねぇが、こいつ等が口の堅い置屋の女将と懇意になるには、それなりの時間も労力も費やしてきたに違いねぇ。
 大事な角屋との繋がりと、何の縁もねぇ新選組の面子を回復する為の協力。
 もし俺がこいつ等の立場だったら、同じく秤にかける事もせずに断っただろう。
 それほどまでに、無茶なものだった。
 こいつ等の協力もなしに俺が千鶴を助けるには、部屋を片っ端から調べれば早いだろうが、そんな事をしたら新選組は二度と島原を歩けなくなっちまう。
 今後の仕事にも、甚大な被害が及ぶだろう。
 副長の俺が、そんな事をする訳にはいかねぇ。
 認めたくはねぇが、完全に手詰まりだった。
 くそっ…どうすりゃいいんだ…!
 何も言えずに俺が黙り込んでいると、千姫は俺の顔を覗き込むように小首を傾げて微笑んだ。

「ご納得頂けましたか?では、あなた方の目的も無事果たせたようですし、どうぞこのまま屯所へお帰り下さい。彼女は私達が助けて、そのまま私達の下で保護します。彼女が新選組へ戻る事は、今後一切ございません。」

 千姫は、冷たい瞳のまま優雅にそう笑うと、俺に最後通牒をつきつけてきた。


 「大丈夫です!私、皆さんのお役に立ちたいんです!」


 あの時千鶴は、凛とした表情で微笑んでいて。
 あの言葉と表情にうたれて、今回の作戦を決めたのは……この俺だ。
 伊東さんと一緒に、会合に付き添うと決めたのも。
 新選組で、あいつを守ると決めたのも。こいつ等が迎えに来た時、「屯所にいろ」と進言したのも俺だ。
 こんな事で、引き下がれるか……!!
 俺は畳の上に両手をつくと、千姫に向かって頭を垂れた。

「…新選組の事は抜きにして、あんた達に頼みたい。千鶴を助ける手伝いを、俺にも……させてくれ。」

 千姫は小さく息を飲んだかと思うと、静かに「土方さん」と声をかけてきた。

「正直私は、新選組として顔が知られている貴方の助けは、必要ないと思っています。ただ…武士というものを重んじる貴方が、女子の私に頭を下げてまで協力を頼み込む理由が分かりません。その理由如何によっては、考えましょう。そこまでする理由を、聞かせてもらえますか。」

 千鶴を、助けたい理由?
 …そんなの、決まってるじゃねぇか。
 俺は小さく口角を上げて苦笑いをすると、畳から両手を上げて身体を起こし、静かに腕組みをした。
 今まで強固に否定して、決して口にはしないでおこうと決めた言葉。
 それを、てめぇから「言おう」と思う時が来るなんて…な。

「俺は―――」

 時が流れるのが、やけにゆっくりなものに思えた。


-陸話へ続く-

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・土方編

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となみかや

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薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
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※現在、WEB拍手は3作品です。
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