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2015/09/02

ジレンマ土方編・壱-There aren't any good words-

幕末設定。土千。 恋仲になる前の捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。


色恋沙汰で予想に反する出来事なんて、今まで何度もあった。
 奉公先で、同じ使用人だった年上の美人と恋仲になれたと思ったら、実は若旦那が手をつけようとしていた女だったとか。
 暴漢に遭っていた女を助けたら一方的に惚れられちまって、しつこく言い寄られた果てに「一緒に死んでくれ」と刃傷沙汰になったとか。
 他にも色々とあるが……まぁ、それは良いとして。
 自慢する訳じゃねぇが、これまで女に不自由した事なんか一度もねぇ。
 江戸よりも京の方が女が多い所為か、言い寄られる事も更に増えたように思う。
 その俺が―――年が一回り以上もあるがきに、おちるなんて…な。
 まったく世の中ってぇのは、分からねぇもんだ。
 …だが、俺にはやらなきゃならねぇ事がある。
 あいつも、「新選組の鬼副長」として巷では風評の悪い俺を選ぶ必要なんかねぇ。
 そもそも俺はあいつに、将来の事は勿論…数日先の口約束すらもしてやれねぇ身だ。
 情に溺れて流されちまったら…あいつを不幸にしちまうのは、目に見えている。
 生死の狭間を縫うような修羅の道に、あいつを連れていく訳にはいかねぇ。


 だから俺は、あいつには何も言わねぇ。

 手を差し伸べたりもしねぇ。

 想いを繋げる事もしねぇ。

 俺は、あいつの手を取る事よりも…新選組の名を押し上げる事を、選んだんだからな―――。






 まだ寒さが残る、三月の初め。
 屯所内にある大広間では、幹部全員参加の合議が行われていた。

「…失礼致します。お茶をお持ちしました。」

 千鶴は入室の挨拶を済ませると、何も言わずに楚々とした動作で上座から順に茶を置いていく。
 幹部の何人かが機嫌良く受け取っていく姿を尻目に、-俺も淹れ立ての香りが立つ湯飲みを口に運んだ。
 粗相をする事もなく仕事が出来た事に安堵したのか、千鶴がふわりと微笑んで「失礼致しました」と、退室の挨拶を済ませて出て行こうとする。
 その時だった。

「…ちょっと、お待ちなさい。」

 柔らかさを持ちながらも、針のような鋭さを併せ持つ声が、千鶴の背中を突き刺した。
 千鶴がこちらを振り向くのと同時に、俺は勿論、室内の全員が声をかけた人物に視線を注がせていく。
 新選組参謀・伊東甲子太郎―――幹部の中でも一際抜け目がなく、一瞬でも警戒を怠る事が出来ねぇ人物だ。

「確か…雪村君、でしたわよね?そこに、座っていただけないかしら。」

 口調は柔らかいが、その言葉には有無を言わせない強さがあった。

「おいおい伊東さん…こいつは、土方さん付きの小姓だぜ?合議に用なんかねぇだろ?」

 原田がすかさず助け舟を出すが、伊東さんは不敵な笑みを浮かべながら「参謀として、大事なお話がありますの」と、やはり強い口調でぴしゃりと言い放った。
 参謀としての肩書きを出されちゃあ、伊東さんよりも組下の原田は何も言えねぇ。
 他の幹部もそれは同じだ。
 当の千鶴は腹を括ったのか、居住まいを正して、意志の強さが宿る大きな瞳で伊東さんを見据えている。
 その潔さに、俺は「やはり江戸の女だな」と思わず口角を上げそうになった。

「お忙しいところを、ごめんなさいね?貴方に、手伝ってもらいたいお仕事があるの。」

 子供に躾をするかのようなやんわりとした口調で、伊東さんが千鶴に微笑みかけた瞬間、幹部全員が俄かに表情を崩した。
 自分の素性を隠している千鶴も、さすがにそれなりの警戒心を持っているらしく、怪訝な顔で「お仕事…ですか?」と聞き返している。
 千鶴に仕事だと?
 こいつ、何考えてやがる……!?
「ええ。新選組として、大事なお仕事なの。やってもらえるかしら?」
「い、いや、伊東さん。雪村君はだな、その……。」
「あら、近藤さん。雪村君が隊務を担う事に、何か不味い事でも?別に、生死に関わるような事ではございませんから、ご安心下さいませ。どうかしら、雪村君?」
「え…あの―――」
「…参謀。お言葉ですが。」

 二の句が告げられない近藤さんの助けようと、合議の間殆ど口をきかなかった斎藤が強引に割り込んできた。
 普段は表情の見えにくい奴だが、明らかに今は焦燥している事が伺えた。

「雪村の剣の腕は、他の隊士達よりも遥かに劣ります。その分、雑務についての小回りが利く為、屯所内の雑務や副長の小姓を仕事としております。重要な任務なのであれば、外での隊務に慣れぬ雪村には、荷が重いかと存じます。」

 斎藤が放つ冷静な尤もらしい発言に、幹部の連中のほっと胸をなでおろす空気が感じられた。
 あんな冷静に言われちまったら、伊東さんも引かざるを得ないだろう―――そう思っていた。

「いいえ。これは、雪村君にしか出来ないお仕事ですの。雪村君。貴方…以前、女装して島原に潜入捜査をしていたわよね?」

 伊東さんが微笑みながら言い放った言葉に、室内全員がはっと息を飲んだ。
 千鶴は全身を固く強張らせたまま、伊東さんに返事をする事もままならねぇ程に狼狽している。
 何で…こいつが、知ってやがるんだ!?
 あの時、伊東さんは伝手のある幕臣連中やら公家連中から資金調達をする為、頻繁に出張してた筈だ。
 どこから話が漏れた……!?
 幹部や俺の心境が読めたのか、伊東さんは楽しそうに「皆さん、不思議そうな顔をされてらっしゃいますのね」と含み笑いをした。
 腹が立ったが、俺は副長だ―――ここは抑えねぇといけねぇ。

「あの捜査には、とても力を入れていらっしゃったようですのね。「幹部達が島原を走り回っていたと、馴染みの妓達から聞きましたの。そして雪村君の女装姿が、それはもう男性とは思えない位に艶やかで、本職の皆も羨む程だった…とね。」

 言い終えた伊東さんの切れ長の瞳が、きらりと光った。
 静まり返った、大広間内。
 緊張した空気の中、視線を這わしては息を潜める幹部達を余所に、伊東さんだけが満足そうに不敵な笑みを作って笑っていた―――。

-弐話へ続く-

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・土方編

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となみかや

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薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
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※現在、WEB拍手は3作品です。
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