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2015/09/01

SSV・土方編- Fleur de fleurs -

現代パロ。土千。バレンタイン2011SSVシリーズ」。


「…ったく。どうすりゃ良いんだよ、これは。」
俺は、自分の机の上に鎮座している箱をちらりと見ては、深いため息をついた。
光沢のある赤いリボンを斜めがけに飾られたその箱は、一目で特別な相手への贈り物だという雰囲気を醸し出している。
俺は口にくわえた煙草に火をつけると、眉根を寄せながらもう片方の手でその箱を手に取った。
縦横12センチ位、高さは30センチ程の、プラスチック製の細長いラッピングボックス。
外から箱の中身が見えるように上部が透明になっていて、中央から下部にかけて、白いレース状の模様が繊細に描かれた上品なデザインだ。
箱の中は、白い紙製の底板に、手触りの良さそうなピンク色のベルベットのような柔らかい上質の布が敷かれている。そしてその中央には、咲きかけの茶色いバラが一輪…綺麗に飾られていた。

「あの…土方先生、雪村です。」
軽いノック音と、ドア越しから遠慮がちにかけてくる声が聞こえた。携帯灰皿に火を消した吸殻を入れながら「入れ」と返事をすると、カラリ、と資料室のドアを開ける音と共に、室内へと入ってくる小さな足音が聞こえた。
座っていた椅子をくるりと回して振り向くと、大きな瞳をぱちぱちと瞬かせながら、手前で細い手を組む女子生徒の姿が眼前に現れた。雪村千鶴―――この学校の唯一の女子生徒だ。
「土方先生。剣道部の日誌を持ってきました。今日は、実力テストでお休ですよね。その旨、記入しておきました。」
雪村は細い両手で、大事そうに俺に手渡してきた。
「あぁ…悪いな。お前も御苦労だったな。朝礼の一件の所為で、お前も色々と大変だっただろ?」
朝礼の一件とは、「学校内において、生徒間での菓子類の配布、交換を一切禁ずる」という、「バレンタインデー禁止令」の事だ。
雪村しか女子がいねぇこの学校でバレンタイン活動なんか許可しちまったら、こいつの身が持たねぇ。経済的にも、心理的にも、体力的にも…だ。
下手をすると、チョコが欲しいが為にこいつを脅迫しようする馬鹿が出てこないとも限らねぇ。そんなくだらねぇ事で問題を起こされても困るから、あえて学校側から強制的に禁止する事にした。発案者は俺だが、反対する職員は一人もいなかった。
「あ…いえ。特に、何もありませんでした。薫は兄としてだと思いますが、斎藤先輩が風紀委員として色々と尽力して下さったみたいです。沖田先輩と平助君も、休み時間の度に来てくれてましたし。」
「…そうか。」
まったく…こいつが絡んだ時の、あいつらの連帯感の強さは一体何なんだ。どうせ、原田や永倉もそれなりに気にかけてやったに違いねぇ。今回の禁止令を発案した、俺が言えた義理でもねぇが。
「まぁ、何事もなかったようなら良いんだが―――…おい、雪村?」
「えっ…あ、はい!」
「ぼーっとしてんじゃねぇよ。一体、何見て……。」
大きな瞳の視線の先を追っていくと。
俺の机の上に鎮座していた、例の箱があった。
 …拙い。いろんな意味で、拙い。
このままだと、禁止令を発案した俺が違反行為をしていたように見えちまうじゃねぇか。
「土方先生…あの」
「いや、お前が考えているような事は、俺はしちゃいねぇ。これには事情があるんだ。良いか、雪村。十分かそこらで構わねぇ。ちょっと黙って、俺の話を聞いてくれ!良いな!?」
何か言おうとした雪村の腕を強引に掴むと、俺は近くにあった丸椅子を引き寄せて「まぁ座れ」と促した。俺の勢いに気圧されたのか、雪村はこくりと小さく頷いて椅子に腰かけた。


事の起こりは、丁度一ヶ月前。俺が、来週やる会議の打ち合わせをする為に学園長室を訪ねた時だった。
学園長である近藤さんは、部屋の奥に置かれている専用のデスクにきちんと腰かけて、珍しく難しい顔をしていた。デスクの上に設置された専用のノートパソコンを食い入るように見つめては、眉をしかめて「うぅん」と唸るような声を上げている。
「…近藤さん、どうかしたのか?」
「あぁ、歳か。知ってるか?欧米ではな、バレンタインの日は女性が男性にチョコを贈るのではなく、男性が意中の女性にバラやプレゼントを贈ったり、デートのエスコートをしたりするらしいぞ!」
「…はぁ?」
おそらく、海外へ留学している娘から聞いた話なんだろう。家族を溺愛している近藤さんは、「少しは格好つけたい」と思ったらしい。「贈る花を見立てたいから、手伝ってくれ」と頼まれちまった。
とりあえず、近藤さんの妻君である恒子さんと、娘の環に似合いそうなバラを数種類選び、最終決定と注文は近藤さん本人に任せた。贈り物ってもんは、本人の意思で選ばないと意味がねぇ。お膳立てを終えて、晴れてお役御免となった一ヶ月後―――つまり、今日の昼休み。近藤さんから、俺宛の宅急便が届いた。

「…それが、このお花なんですか?」
「あぁ。花を選ぶのに手伝ってくれた礼だとよ。近藤さんと一緒に通販のサイトを見ている時に、珍しい花だと思って、つい詳しいページを見ていた事があってな。どうやらそれを、「俺が気に入った」と勘違いしちまったらしい。」
「そうなんですか…近藤先生らしいですね。」
雪村は肩を縮めると、ふわりと楽しげに笑った。
まぁ…他にも、花をくれた理由はあるんだがな。
俺は、心の中で小さくため息をついた。


「近藤さん…気持ちは嬉しいけどな。この花は、一体どうすりゃ良いんだよ。俺は、てめぇの部屋に花を飾る趣味なんかねぇぞ。」
『何を言ってるんだ、歳。プレゼントすれば良いだろう?意中の女性に。』
「…はぁ?」
『惚けたって無駄だぞ。長い付き合いなんだ…お前が、誰かに想いを寄せている事位お見通しだ。その女性が、一体誰なのかは知らないが…歳が惚れるような女性だ。男から贈られた花を、無碍にするような女性ではないのだろう?』
「…!」
『まぁ…たまには、イベントに乗せられるのも良いじゃないか。今日は、出先からそのまま帰宅するからな。妻と食事をする約束をしているんだ。歳も、今年位はバレンタインデーを楽しんでくれ。じゃあな!』
近藤さんはのんきな声でそう言うと、俺からのクレーム電話を一方的に切り上げてしまった。


 …ったく、余計な気を回しやがって。
そもそも、近藤さんはどこまで知ってやがるんだ?
俺が―――…
「確かにこのお花、とても綺麗ですよね。私、こんなに綺麗な茶色のバラ、初めて見ました。」
雪村は、箱の中の咲きかけのバラを物珍しそうに見つめている。確かに、近所の花屋とかで見るようなバラじゃねぇから、どうしても好奇心を抑えられねぇようだ。俺も通販の紹介ページで視線を取られたから、気持ちが分からなくもねぇ。
「あぁ…俺も、初めて見る。実際バラは、品種改良が盛んな花らしいからな。それこそ数万種類もあるらしいから、茶色いバラがあっても特に不思議な事じゃねぇんだろうけどな。」
「そうなんですか…このバラって、ミルクチョコレートみたいな色ですよね。つるっとしているというか、とろっとしているというか…溶かしたチョコレートみたいな感じです。」
楽しそうにはしゃぎながら出た雪村の言葉に、思わず俺はぷっと吹き出した。
雪村はきょとんと小首を傾げながら、「先生?」と不思議そうな顔で声をかけてくる。まるで、小動物みてぇな可愛らしい姿だった。
「いや…すまねぇ。お前の感想が、あまりにも的を得ていたから、つい…な。雪村。そのバラの名前、何ていう名前なのか、当ててみろ。」
「名前、ですか?えーっと……茶色ですけど、単に「ブラウン」とかじゃないんですよね?「ココア」、とか…「チョコレート」、とか……。」
人差し指を額に当てながら、雪村は思考を張り巡らしている。出てくる言葉が食い物ばかりなのは、おそらくさっき口にした「ミルクチョコレート」のイメージが強いからだろう。
「まぁ、概ね正解だな。Chocolatで、「ショコラ」だ。よくは知らねぇが、古代ギリシャあたりからあったみてぇだな。昔は小ぶりの花だったらしいんだが、品種改良されてこの大きさになったんだと。開花すると、8センチ位にはなるそうだ。」
「そうなんですか…!そんな昔から、愛されているバラなんですね……!ちゃんと開花したら、すごく綺麗なんでしょうね。」
雪村はまるで夢でも見てるかのように、まだ花びらを少し浮かせて咲きかけている茶色の花びらを愛しげに見つめている。

俺は軽く咳払いをすると、静かに口を開いた。
「…お前がそんなに気に入ったんなら、やるよ。」
「えっ!?」
「俺は、部屋に花を飾る趣味なんかねぇしな。まだ咲きかけだし、きちっと管理すれば長く咲いていられるだろ。俺だと、さっさと枯らしちまいそうだからな。」
「で、でも…これは、近藤先生からのお礼の品なんですよね!?それなのに私なんかが頂いてしまったら……。」
「あぁ…まぁ、それについては問題ねぇ。それにこのバラも、男の俺よりも女のお前のところで大事に咲かせてもらった方が、嬉しいに決まってんだろ。」
雪村は困ったように眉をハの字に下げながら「でも」とオロオロしている。こいつのこういう遠慮深げなところは、確かに良いところでもあるんだがな。
俺は小さくため息をつくと、雪村の小さな手を取って箱を強引に手渡した。
「良いから、持っていけ!その代わり、ちゃんと世話をして、開花させてやれ。開花したら、画像メールで知らせろ。俺への礼は、それで良い。分かったな?」
「…はい!ありがとうございます!」
ふわりとほほ笑んだ笑顔は、それこそ花のようで。
奇しくも近藤さんが言った通りの展開になった事が、嬉しいやら悔しいやら…何とも複雑な気分がした。
「あぁ、雪村。確かにこいつは、ショコラって名前だがな。食ってもチョコレートの味なんかしねぇから、気をつけろよ?」
「そ、そんな事しませんっ!土方先生、意地悪ですっ…!」
ぷうっと頬を膨らませながらも、大事そうに箱を抱える惚れた女の嬉しそうな姿に、俺は聞こえないように「たまには、イベントに乗せられるのも悪くはねぇな」と小さく呟いた。


-了-

――― あとがき ―――
子のお話は公式で「クリスマス禁止」というお話があったので、「バレンタインも禁止!?」と思ったのが、「SSV」を作ったきっかけです。(当時はSSLゲーム化の話すらありませんでした)

 土方さんのお話は、どうしようかとすごく悩みました。
禁止令の発案者ですからね…彼のキャラを鑑みても、自ら違反行為はしないだろ、と;
千鶴ちゃんも、彼が発案者なら尚更バレンタイン活動なんてしないだろうなぁと思い、彼女からのアプローチは断念。
という訳で、「伝家の宝刀」である近藤さんを引っ張ってきました!
この人からお膳立てをされたら、絶対に引けないだろうと思いまして;
「ショコラって名前だけど、花だから別に良いよね!」という屁理屈もついてます;

私は海外へ行った事がありませんので詳しくはありませんが、欧米では男性が贈り物をしたり、デートのエスコートをしたりする事があるんだそうです。
私が書くSSLパラレルのお話では、近藤さんの娘(環ちゃんと命名)は海外へ留学中という設定にしているので、彼女から情報がきた…というお話にしました。

ショコラという花は、実在する茶色いバラです。
育て方や気温などの環境によって色が変わってしまうそうなので、文中にあるように「ミルクチョコレートのような色」になる可能性もあれば、別の色になる事もあるんだとか。
土方さんが千鶴ちゃんに「開花したらメールしろ」という言葉ですが、「折角近藤さんから貰ったお礼の珍しい花を、自分が貰ってしまった」という事に遠慮してしまわないようにという配慮です。
彼女は慎み深い子なので、「申し訳ないなぁ」と思わない為に、土方さんが先手をうっています。

サブタイトルの「Fleur de fleurs」は、「花の中の花」という意味です。某ブランドの香水の名前でもありますね。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : SSV バレンタイン2011

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となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
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※現在、WEB拍手は3作品です。
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