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2015/09/01

SSV・ 原田編- They are forestalled -

現代パロ。原千。バレンタイン2011SSVシリーズ」。


―――世間様は、バレンタインデーという今日を、浮き足立って過ごしているってぇのに。
明らかに不貞腐れている奴。
この世の終わりみてぇな顔をしている奴。
生気を失っちまっている奴。
学校内は、そんな不穏な空気を持つ屍みてぇな生徒達しかいなかった。

 理由は、ただ一つ。
全校生徒参加の朝礼で、出張中の近藤さん…学園長の代わりに挨拶をした土方さん…教頭が、「学校内で、生徒間による菓子類の配布は一切禁止」―――つまり「バレンタイン活動は禁止」という、冷酷非常としかいえねぇ規則を発表しちまったからだ。
 うちの学校の女子生徒は、たった一人しか在籍していない。
思春期ゆえの、若さから来る野郎共の「勢い」やら「プライド」やらを危険視した教師達(オレを含む)は、その唯一の女子である雪村千鶴の身を案じて、急遽「禁止令」を決めた。
野郎共には気の毒だが、たかがバレンタインのチョコレートの一つや二つで問題を起こされても困るからな…仕方ねぇだろ。


「どうせ雪村のチョコを狙って、自由登校の三年の奴等も、いそいそと登校して来やがるだろ。登校率も無駄に高そうだし、抜き打ちで実力テストでも実施してやるか。卒業前やら進級前やら就職前やらで浮かれているガキ共の、緩みきった根性を叩き直す良い機会だしな。」

 そう言った鬼教頭…もとい土方さんの顔は、そりゃもう喜色満面だった。
悪どいにも程がある。「総司の事を言えた義理じゃねぇだろ」とオレは思うんだが…自分から火の粉を被るような必要もねぇから、敢えて黙っておく事にした。
 それに、オレ個人としては、この禁止令にちょっと感謝をしている。
真面目な千鶴は、この禁止令の所為で誰にもチョコを渡す事が出来ねぇだろう。これで、オレのライバル達が良い思いをする可能性はなくなった訳だ。
 …ありがとな、土方さん。オレから感謝されているとは、思ってもいねぇだろうけどよ。



 生徒もまばらになった、放課後。
オレは校舎裏の花壇の前にあるベンチに座って一人、缶コーヒーを飲んでいた。
実力テストの教科の中に、保健体育は入っちゃいない。他の教師が採点に没頭しているのを尻目に、オレはピリピリしている職員室を抜け出して、ここでこっそり休憩をしていた。
風はまだ冷たいとはいえ、空は澄み切った晴天で、世間一般のバレンタインとしてはなかなか良い天気だと思う。
 …こんな日に、あいつらも気の毒だよな。
バレンタイン禁止令と抜き打ちテスト実施という降って湧いた生徒の不幸に、思わず俯いて苦笑した時だった。

「原田せーんせいっ!」
「先生!こっち、こっち!」

 正面から、二つのカン高い声に呼びかけられた。
 何だ!?
オレが顔を上げると、フェンス越しに学校の敷地の外で、にこやかに笑っている二人の女子高生がいた。勿論うちの制服である訳がなく、近所にあるお嬢様学校―――島原女子の制服だった。
ベンチから立ち上がって、フェンスへと近づいていく。毛先を綺麗にカールした茶色い髪の生徒と、ショートカットの黒髪の生徒。どっちも見慣れない顔だったが、女に声をかけられるのは一度や二度じゃねぇから、別に身構えもしなかった。

「あー…悪いな。島原女子の生徒に、知り合いは殆どいねぇんだが…誰だ?」
「いいえ!お話するのは、今が初めてですよ!ねっ?」
「うん!」

 二人の生徒は悪びれもせず、楽しそうにはしゃぎながら互いに顔を見合わせた。
うちの学校は、実力テストで時間が短くなっている為もう放課後だが、島原女子は平常通りの筈だ。おそらくこいつ等は、学校を抜け出してきたに違いねぇ。
 さて、どうするか―――オレが思案していると、二人はフェンス越しのまま、手に持っていた包みを宝物を見せるように自分の顔の近くまで掲げて無邪気に笑った。

「先生!これ、バレンタインデーのチョコレートです!受け取って下さい!」

 おいおい…話した事もねぇ他校の教師にチョコレートを渡す為に、わざわざ学校を抜け出してきたのかよ。
とても正気の沙汰とは思えねぇんだが…それとも今時の女子高生の意識ってのは、こんなもんなのか?
うちにいる唯一の女子生徒とは、確実に違う次元で生きていそうな二人を、オレは若干呆れた顔で眺める。
二人は、「授業を抜け出してきた」という所業に微塵の罪悪感も持ち合わせていないような笑顔で、オレを見ていた。

「あー…気持ちは嬉しいんだけど、よ。学校を抜け出して授業をサボるような悪い生徒からのプレゼントは、ちっと貰えねぇな。オレも、一応教師だからな。今日の事は、見なかった事にしといてやるからよ。見つかって叱られねぇうちに、学校へ帰りな。」
「ちぇー。やっぱり駄目かぁ。」
「分かりましたぁ。良い子だから、戻りまーす。またね、原田先生っ!」

 二人は明るい声で笑いながらオレに手を振ると、何がそんなに嬉しいのか軽やかな足取りで去っていった。
 …そもそも良い子は、学校を抜け出したりなんかしねぇけどな。
ついでにいうと、自分の事を「良い子」とは言わねぇだろ。
 まっ、良い退屈しのぎにはなったが…最近の女子高生は、物怖じしねぇもんだな。
オレが島原女子へ連絡する可能性を考えなかったのか?別に、そんな事をする気はねぇけどよ。



職員室へと戻る途中、ふと見た渡り廊下を挟んだ向かいの廊下で、下駄箱へと向かう小さな人影を見つけた。
 線の細いスタイルに、華奢な肩。
大きな黒目がちの瞳に、真っ白い肌。
桜色のシュシュで軽く髪を結わえた、染めていない艶のある黒髪。
 ―――あぁ…やっぱり、全然違うな。
豪快な外向きの歩き方でもなければ、骨格が歪む様な内向きの歩き方でもない。
姿勢良く綺麗に歩いていくその姿に見とれて、思わずさっきの二人と思わず比べちまった。

「雪村!今、ちょっと良いか?」
「あ…はい。」

オレが職員室へ寄って昇降口へ大急ぎで戻ると、千鶴はさっき手に持っていたコートを羽織っていた。底冷えのする昇降口で待たせた事を少し後悔しながら、オレは赤い小さな紙袋を千鶴に手渡した。


「呼び止めたのはこっちなのに、待たせちまって悪かったな。先生方が実力テストの採点をしてるから、職員室は生徒の入室禁止になっちまっててよ。…で、用ってのは、これだ。」
「いえ、それは全然大丈夫ですけど…あの、これは…?」
「見てわかんねぇか?オレからの、「逆チョコ」ってやつだ。」

 おそらく想像もしなかっただろうオレの言葉に、千鶴は表情を固まらせた。まぁ…そういう顔になるだろうな。
頬を赤く染まらせながらも、眉をハの字にして「でも、その、あの」と上手く言葉を紡ぎだせずにいる千鶴に、オレは「よく思い出せよ」と小さく笑った。

「え?」
「土方さんが出したのは、「生徒間のバレンタイン禁止」だ。オレは教師なんだから、特に問題もねぇだろ。そもそもこの禁止令はな、男子生徒がお前からのチョコを期待して大騒ぎになるかもしれねぇからっていう、先生方の配慮だ。オレの場合、お前から物を貰う訳じゃねぇんだし、別に構わねぇと思うんだが…貰ってくれねぇか?」
「で、でも…。」
「それにこれは、オレがお前の為だけに用意したもんだ。もしお前が要らねぇっていうんなら、仕方ねぇからそのまま捨てちまおうかと思ってるんだが―――」
「だ、駄目ですっ!」

 オレが言い終わる前に物凄い勢いでそう言うと、千鶴は紙袋をぎゅっと抱きしめながら首をふるふると横に振った。
 …よし、かかったな。
オレは内心ほくそ笑んだ。千鶴からの返答は、予想通りのものだった。

「…そうか。じゃあ、貰ってくれるんだな?」
「あっ…!」

 千鶴は謀られた事にハッと気がついたみてぇだが、もう遅い。オレは、戸惑っている千鶴ににっこりと微笑むと、小さな肩をぽん、と叩いて。

「ありがとな…千鶴。」

 千鶴の耳元で、決して人前では呼ばない―――目の前にいる惚れた女の名前を呼んだ。
 オレからのプレゼントを抱きかかえたまま、オレが囁いた側の耳を抑えながら千鶴は顔を真っ赤にさせている。
困ったような恥ずかしそうな顔でオレを睨むように見つめている姿が可愛くて、思わず顔がニヤちまう。
 それを隠すようにくるりと踵を返しながら、オレは「暗くなる前に気をつけて帰れよ」と、軽く手を振って歩き出した。

 …まっ、これ位のフライングは良いだろ。
あいつらに比べてオレは、「年の差」と「教師」っていう、二つのデカいハンデがあるんだからな。
 職員室へと続く冷えた廊下を乱雑な足取りで歩きながら、オレの心の中はふわりとした暖かさで満ちていた―――。


-了-

――― あとがき ―――
このお話は、2011年公式で「クリスマス禁止」というお話があったので、「バレンタインも禁止!?」と思ったのが、「SSV」を作ったきっかけです(当時はSSLゲーム化の話すらありませんでした)。

左之さんは、土方さんよりも柔軟なタイプのようですし、押しの一手もきっちりしそうだったので「禁止令?んなもんは、生徒同士の間だけだろ?オレは教師だから、別に良いんだよ」と大人特有の妙な反則技を使ってもらいました(本当に言いそうだしw)。
彼は相当女性にもてそうだったので、「ファンの子達」という事で、島原女子の子達にも登場してもらいました。
特に恋愛感情はなく、イベントとして楽しんでいる…みたいな子達ですね。ええ、それでも授業を抜け出すのはどうかと思いますがw;

一応左之さんは教師なので「雪村」と呼んでいますが、やはり「逆チョコ」を渡してまで抜け駆けをするのであれば、更にもう一押しするかもしれない!と思い、耳元で名前呼びをしてもらいました。
いちいち無駄にエロスを振りまく男、原田左之助(褒めてます)。
不意打ちでそんなものをくらってしまった初心な千鶴ちゃんですが、彼女の心の内はそれはそれは大変だったと思います。

サブタイトルの「They are forestalled」は、「抜け駆けをする」という意味です。そのままですね。
帰宅後、千鶴ちゃんは真っ赤になりながらプレゼントを前に色々反芻してはジタバタしていたんじゃないかと思われます。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : SSV バレンタイン2011

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