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2015/09/01

ジレンマ原田編・弐- I didn't mean that!-

幕末設定。原千。 恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。

「いやあ、お前がそっちの道に走るなんてなあ。世の中ってえのは、わっかんねえもんだよなあ?」

 新八はげらげら笑いながら、オレの背中を勢い良く叩いた。
 馬鹿力で叩かれた勢いで、オレは持っていた湯飲みの中の茶を零しそうになる。

「新八…てめぇ、斬られてぇのか?」

 オレの射抜くような視線も、所詮は他人事の新八は「まあ、気にすんなよ!噂なんか、そのうち消えちまうって!」と無責任に笑っている。
 オレは既にぬるくなっちまっている湯のみを口に運ぶと、小さく溜め息をついた。
 新八の淹れた茶は、どろっと濃くて苦い。
 まるで、オレの今の気分のようだった。



 昼餉の後、オレと新八は大広間で茶を飲んでいた。
 出来る事なら自棄酒でも飲みてぇところだが、生憎今は昼間だ。
 さすがに、幹部が昼間っから酒を飲むのは拙い。
 幹部の連中も、あの噂について既に知っているようだった。
 まぁ新八が知っているんだから、他の奴等が知らねぇ筈がねぇんだけどよ。
 いつもの騒がしい空気はどこへやらで、飯の間中ずっと、オレに対する好奇を含んだ視線と気まずい空気が流れていた。
 せめてもの救いは、新八が変わらずいつも通りの態度だった事と、平助と千鶴が外出してその場にいない事だった。 平助は非番で遊びに行っちまっていて、千鶴は土方さんに頼まれて外に出ていた。
 千鶴が出た後、間をおいて山崎が護衛の為に千鶴を尾行していったから、おそらく問題はねぇだろう。

「でもなあ、左之?ありゃ、お前が悪いんだぞ?女にもてるお前があんな事を言っちまったら、そりゃあ噂にもなるってもんだぜ。自業自得だろ。」

 新八が、「阿呆だなあ」とでも言わんばかりの顔で珍しくオレを諭してきた。
 うるせぇな。
 オレだって分かってんだよ、自分のせいだって事位。

「仕方ねぇだろ…言っちまったもんは。それにな、千鶴のあんな姿を見たら、他の女になんか目が向く訳ねぇだろ。」
「ああ!あん時の千鶴ちゃんは、綺麗で可愛かったもんなあ!ありゃ本気で驚いたぜ!女ってのは、変わるもんだよなあ!!」

 新八は目線をちらりと上に上げると、嬉しそうにうんうんと頷いた。

「まぁ千鶴は、元が良いからな。化粧栄えするのも当然だろ。座敷へ上がったら、本職の女達が完全に霞んでたからなぁ。ありゃ反則ってもんだぜ。」

 軽くついた溜め息と共に、思わず本音が零れた。


 「あの時の千鶴」とは、島原へ潜入する為に、千鶴が芸者に変装した時のやつだ。
 あの姿を見た皆が、一瞬だけ息を呑んだのをオレはきっちりと覚えている。
 平助や新八や近藤さんは勿論、斎藤や総司、土方さんまでが千鶴に見惚れていた。
 あの時から―――いやあの時よりも前からなのかもしれねぇが、数人の奴等の千鶴を見る目つきが、明らかに以前とは変わった。
 まぁ、当の千鶴は全然気づいてねぇんだけどよ。
 あいつの鈍さは、筋金入りだからな。

「でもなあ。屯所の奴等への牽制ならともかくよお?いくらあの子に意思表示したかったからって、島原の奴等の前で「今はこいつに夢中だから、女遊びはしねぇんだ」って言ったら、そりゃ誤解もされるだろ。」
「んな事言ったってよぉ!お前と違ってオレは、最初っから千鶴の事は女にしか見えなかったし。あぁもう、うっかりしてたんだよ!うっかり!」

 オレが苛ついて吠えると、新八は「…そこで、だ!オレに名案がある!」と明るく笑った。

「…名案?」

 オレは眉根を寄せて新八を見た。
 嫌な予感がする。
 こいつがこんな顔で出してくる案は、絶対まともじゃねぇ。
 なんせ、島原での不逞浪士の探索方法に「芸者達を、オレの筋肉で惚れさせて口を割らせる」という阿呆な策を言い出した奴だからな。

「その案っていうのはな…皆で島原に飲みに行くんだ!」
「…はぁ?」
「島原で女を侍らせて一晩中飲み歩きゃあ、女達も「左之様、元に戻ったのね!」って喜んでやってくるさ!そんな噂だって、吹っ飛ぶだろ!!」

 女の声真似をしながら科を作って、新八はオレに寄り添ってくる。
 やめろ、気持ち悪ぃ。
 男に撓垂れ掛かられても、嬉しくも何ともねぇよ。

「…お前、またどっかの女に入れ込んだな?桔梗屋にいる新造か?それとも、角屋の芸妓か?」

 オレの冷たい視線に新八はぎくりと身体を固まらせると、オレを見ないようにきょろきょろと目を泳がせながら居心地悪そうに笑った。
 当たりか。
 この、単純馬鹿野郎が。
 完全に、オレをだしに使うつもりじゃねぇか。

「こっ、今度は、絶対だって!あっちも、オレの事を想ってくれてるみてえだしよ!なあ、左之~…」
「うるせぇ。そんな手に、オレはのらねぇからな。」

 着物を引っ張って強請ってくる新八の手を振り解いて、オレが残りの茶を飲み干した時だった。

「あら。こんなところに、時の人がいらっしゃいますわよ。原田さん、永倉さんも。お休み中ですかしら?」

 柔らかい中にも針のように冷たく刺す声が、大広間の入り口から聞こえてきた。
 参謀の伊東さんだ。その後ろには、腰巾着みてぇにいつも伊東さんにくっついている、お付きの奴等が二人。
 確か…内海と三木といったか。

「…伊東さん。」
「よお、伊東さん!昼飯で腹も膨れたんでな、ちょっと茶で一服してたとこだ。伊東さんは、あれか?別宅で、昼餉がてらに皆で講義か?」

 オレが思わず「嫌な奴に会っちまった」と思ったところを、新八がにかっと陽気に笑って伊東さんに応対した。

「ええ、ちょっと。それより…原田さん、噂は聞きましてよ。最近、武士の嗜みを身に付けられたのですって?」

 伊東さんは、口の端だけでにやりと笑った。
 後ろの奴等も、オレを見ながらくすくすと含み笑いをしている。
 嫌な笑い方をしやがる…どういうつもりだ?
「あー…、伊東さん。それはだな…」
「あら、永倉さん。私、「原田さんを見直した」と、褒めているんですのよ?」

 怒りのあまり黙り込んでいるオレに助け舟を出そうと新八が口を開くと、伊東さんは白い手をすうっと前に出して遮った。

「…はぁ?」
「左之を褒める?そりゃあ、どういう…?」

 新八は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔で伊東さんを見返した。
 おそらく、オレも同じような顔をしてるんだろう。
 オレ達の顔をゆっくりと見て、伊東さんはくすりと笑った。

「決まっているでしょう?武士における念者の間柄は、信頼の証ですわ。原田さんは確かに女性にはおもてになられるようですけど、未だ決まった女性は作らず、念友もいらっしゃらないご様子。「武士」として名を挙げるには、些か…ねぇ?」

 伊東さんは芝居がかった口調でそう言うと、口元を袂で抑えてから憐憫の視線でオレをちらりと見た。
 何でオレが、よりによってこいつなんかに憐れみの目で見られねぇといけねぇんだ。
 ぶん殴りたくなる気持ちを抑えるのに、オレは全神経をつかった。

「ちょ…ちょっと、伊東さん。あのな…」

 オレの怒気にびくりと肩を震わせた新八は、伊東さんの暴走を何とか止めようとするが、伊東さんの講釈は止まる事なく進んでいく。

「ああ―――でも!やっと原田さんにも、その嗜みが理解されたご様子。私、本当に良かったと思っておりますのよ?」
「…一体、何が言いてぇんだ。」

 こいつの言っている意味が本当によく分からねぇのは、オレにこいつ程の学がねぇからだろうか。
 それとも、オレが怒りで正常な判断が出来そうにもねぇ状況だからか?
 いや…それよりも、さっきからこいつの後ろの奴等二人が、オレを値踏みするような視線で見ているのは気のせいじゃねぇはずだ。
 伊東一派への勧誘か?
 それとも、他に何か理由でも?
「まぁ、込み入ったお話は後日改めて。お近づきのしるしに、今度私の主催する宴に原田さんをご招待しますわ。そこで、ゆっくりお話しましょう。私、詳しいんですのよ?……宮川町の界隈は。」

伊東さんは優雅な所作で、にこりと笑った。後ろの二人も同じような笑顔でゆっくりと頷く。


 宮川町…あのあたりっていうと―――…陰間!?

「あら、いけない。長居をしてしまいましたわね。用がありますので、私はこれで。失礼致します。」

 伊東さんは高らかに笑うと、腰巾着を連れて大広間を出て行った。
 陰間茶屋に、オレをご招待だと?
 それは、どっちの意味でだ?
 オレを馬鹿にしてか?
 それとも……。

「お、おい……左之?」
「新八。」

 心配そうな声でオレの背中に声をかけてきた新八を、オレは低い声で静かに呼んだ。

「お、おお。お前、平気…」
「…今夜だ。」
「は?」

 ぐるりと振り向いたオレの顔を見て、新八は後ろにずさっと後退った。
 青ざめた顔で頬を引き攣らせているが、気にしねぇ。
 これから、お前の望みを叶えてやるんだからな。

「…島原だ。今夜、隊務が終わったら行くぞ。お前の言う通り、一晩中飲みまくってやる。何なら、お前が気に入っている女でも何でも呼んで良いからよ。あの胸糞悪い噂のせいで、これ以上あんな野郎に虚仮にされてたまるかってんだ!!」

 思わず力一杯握り締めたせいで、湯飲み茶碗にぴきり、と罅が入る。
 視界の隅で、こくこくと小さく何度も頷く新八が、まるでからくり人形のように見えた。

-参へ続く-

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・原田編

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プロフィール

となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
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※現在、WEB拍手は3作品です。
龍鈴(薄桜鬼)/原千(薄桜鬼)/
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前編後編

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