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2015/09/01

ジレンマ原田編・壱- I didn't mean that!-

幕末設定。原千。 恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。


―――全く、冗談じゃねぇよ。
 オレは、井戸から汲み上げた水で勢い良く顔を洗うと、つたい落ちる雫を腕で拭いながら一人、重たい溜め息をついた。



 つい先刻の事だ。
 道場の隣にある井戸の前は、午前の稽古を終えた隊士達で俄かに賑やかになっていた。
 真冬だが、厳しい稽古でかいた汗を流す為に井戸を利用する隊士は多い。
 頑張っていたあいつ等を労ってやろうと、オレが姿を現した時だった。

「はっ、原田組長っ…!」

 オレの姿が目に留まったらしく、隊士の一人がオレの名前を呟いた。
 その途端、ざわっとどよめいた声が響いたかと思うと、まるで空気が止まったみてぇにその場にいた奴等の動きが固まり、全員がゆっくりとオレの方に振り向いてきた。
 その瞳は、まるで獣に睨まれた獲物みてぇに、明らかに怯えた色を湛えている。
 ぞんざいな所作でくつろげていた着物を、オレから隠すかのように慌てて直す者。
 急にオレから背を向けて、そそくさと後片付けを始める者。
 顔を俯かせては、きょろきょろと視線を這わせる者。
 やり取りは様々だったが、明らかにオレを避けたがっているのは明白だ。
 誓って言うが、オレは隊士の評判が悪い方だと感じた事はねぇ。
 いつも怒鳴り散らしている仕事一徹の鬼副長や、いつもは飄々としているのに稽古となると途端に気性が荒くなる気分屋な組長とか、いつもは無表情なのに稀にでかい呆けた言動をする天然組長よりは、幾分かはましな方なんじゃねぇかと思っていたんだが―――。

「…よぅ。午前の稽古か。お疲れさん。」
「は、はいっ!組長もお疲れ様ですっ!では、自分は失礼致しますっ!」
「組長、お疲れ様ですっ!それでは、自分もっ!」

 隊士達は気まずそうにオレから視線を外したかと思うと、我先にと物凄い速さで井戸端から去っていった。

「…冗談じゃねぇよ、ったく……。」

 あいつ等の逃げていく姿を見送った後、オレは桶の中の水で手拭いを洗って固く絞り、顔をがしがしと乱暴に拭いた。
 それでも気分が晴れる訳もなく、その場で二度目の溜め息をついた。




今屯所内では、オレの黒い噂がまことしやかに流れている。


 「新選組の十番隊組長の原田左之助は、女に言い寄られ過ぎたのが原因で女嫌いとなり、衆道(男色の事)に走ったらしい」―――。


 心外にも程がある。
 誰が好き好んで、男に走るかってんだ。
 別に、そういう趣味の奴がいても、オレは特に気なんかしねぇよ。
 世の中広いからな…どんな形のものだろうと、誰かに想いを寄せるってぇのは良いもんだ。
 まぁ、「武士の衆道は忠義に繋がる」とも言うしな。
 ただオレ自身は、出来る事なら御免被りてぇと思ってる。
 男なんかに口説かれても、ちっとも嬉しくねぇ。
 口説くのも口説かれるのも、女が良いに決まってんだろ。
 まぁ誰だって、己の中にある守るべき信念やら何やらがある訳だから、実際は個人の自由で良いんじゃねぇかとは思うんだが…何も相手からの信頼を得る為の手段が、女との艶事と同じっていうのもなぁ。
 そうなると、オレは新八と枕を共にしなくちゃならなくなっちまうじゃねぇか。
 …勘弁してくれ。
 想像したくもねぇよ。
 それに自慢じゃねぇが、オレは今まで色恋沙汰で女に苦労した覚えなんて、これっぽっちもない。
 確かに好きになった女を口説く事は少なくなかったが、女の方から言い寄られた事も、二度や三度じゃねぇしな。
 それでも、ちゃんと良い仲の相手がいた時は他の女なんかには目を向けなかったし、言い寄ってきた相手にも誠意を尽くした返事をして、事態が悪くなる前にきちんと収めてきたつもりだぜ?
 それなのに、だ。
 このオレが。
 男色だと?
 悪い冗談を通り越して、悪夢だろ。
 何の罰だよ、こりゃあ?
 とりあえず、何とかしてこの馬鹿げた誤解を解かねぇと、一番誤解をされると拙い奴の耳に入っちまうかもしれねぇ。


 ―――原田さん。


 まとめた髪をふわりと揺らして、オレに向かって儚げに微笑むあいつの姿が脳裏に浮かんだ。
 思わず頬が緩むのを覚えて、オレは桶の中の水を勢い良く流し終えると、急ぎ足でその場を後にした。

 …事は一刻を争う。
 良くねぇ誤解を生んじまう前に、何とかしねぇとな……!

-弐へ続く-

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・原田編

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