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2015/09/01

いち・たす・いち ― 彼と彼女の距離 ―

現代パロ。平千。千鶴視点。幼馴染じみから恋人同士になった二人の話。


 さむいさむい、冬の午後。
 駅の近くにあるショッピングモールから外に出ると、澄んだ水色だった筈の空は、いつのまにか灰色の雲がすっぽりと広がっていた。
(サンタさんのおひげみたいだなあ)
 大きな広場に飾られていたツリーの近くで、子供達に囲まれていたサンタクロースのお兄さん…かな?の事を思い出しながら、私がもくもくした綿雲を見ていると。
「千鶴?」
 私の後ろで、少し心配したような口調の声が聞こえた。
 くるっと振り向くと、私のすぐ近くにいた大きな瞳の男の子が、心配そうな顔で私の顔を見つめている。
「どうしたんだよ、急に立ち止まって。…具合でも悪いのか?」
「…!」
 私とは、あまり身長差がないからかな?
 頭をほんの少し傾けるだけで、すごく顔が近くなる気がして、ドキドキしてしまう。
 私は少し後ろに身体を避けると、パタパタと両手を振った。
「う、ううん。空がね、曇ってきちゃったなあって。そう思っただけだよ。」
「マジで!?うわー…すげー雲ってんな。結構寒くなってきたし、雪とか降んねーといいけどな。」
 首に緩く巻いていた、向日葵の花みたいに綺麗な黄色いマフラーを、自分の手でくるんと巻き直してから。
 何も言わなくてもそれが当たり前みたいに、私の手をきゅっと優しく繋いでくれる…少し大きな手。
 ちゃんと恋人同士だよって許されているみたいな、この近い距離が…恥ずかしいけど、ちょっと嬉しい。
「じゃあ行こうぜ、千鶴。」
「うん。」
 彼の楽しそうな笑顔に小さく頷いて、私達は灰色の曇り空の下をゆっくりと歩き出した。





 彼の名前は、平助君。
 藤堂平助君。
 私よりも一つ年上で、幼稚園からずっと一緒の幼馴染みの関係。
 その彼と、最近「お付き合い」を始めた。
 ずっと一緒にいた所為で、私は自分の気持ちに全然気が付かなくて。
 平助君の事を「男の子」だってちゃんと意識し始めたのは、平助君が中学生になって…私と一緒にいられる時間がすごく少なくなってからだった。
 自動歩行のエスカレーターみたいに、「大人」になるための準備期間は私の意志を待ってくれないまま過ぎていって。
 賭けに出られる程の勇気が持てないまま、何の決着もつけられないまま…高校生一年が終わろうとしていた、三月の半ば。


『オレ、ガキの頃からずっと千鶴が好きだった。「ただの幼馴染み」っつーの…もう、いい加減、やめにしてーんだけど。』


 ずっとずっと、私の目の前に高く聳え立っていた「幼馴染み」の壁。
 平助君は、それを飛び越えて、手を伸ばしてくれた―――。
(そっか…あれから、もうすぐ十ヶ月近くになるんだ)
 私は、隣にいる平助君の横顔をちらり、と盗み見た。
 意志の強そうな、大きな瞳。
 寝癖を直すのが大変だって聞いている、少し癖毛の茶色い髪。
 小さい頃は、私の方が背の高い時期もあったのに、いつのまにか平助君の方が高くなっていって。
 声も、男の人に近い少し低めの声になって。
 腕の力も。
 足の速さも。
 もう私には、全然適わなくなっていった。
(男の子ってすごいなあ…)
 いつのまにか車道側を歩いてくれていた平助君の左手は、私の右手としっかり繋がっている。
 幼稚園の頃は、無意識で繋ぎ合っていた手。
 ずっとずっと長い間、指先さえも触れられなくなっていたけれど…今は違う。
 特別に何かを決め合った訳でもないのに、何も言わなくても、こうして自然に手を繋ぎ合えている。
(小さい頃にも、よくこうやって手を繋いでたよね)
(今と昔じゃ、いろんな事が全然違うのに…何か変なの)


「…なー…千鶴。」
「なあに?」
「…さっきからさ。何かあったのか?」
(何が?)
 聞かれた質問の意味が分からなくて、思ったまま聞き返すと、平助君は苦笑しながら私に話してくれた。
「気付いてねーの?さっきからお前、ずっとニヤニヤ笑ってる。」
「!?」
 自由になっている方の手で慌てて顔を隠したけど、見られていた事はどうにもならなくて。
 平助君は大きな瞳を一瞬だけ大きく見開くと、楽しそうな顔で「お前、顔真っ赤」って、おかしそうにケラケラと笑った。
「ほ、ほんと、に?」
「マジだって。外に出てから、ずーっと!」
 震える声で聞いた私に、平助君はおかしそうに笑いながら「ずーっと」っていう部分を強調した。
 顔が、まるで焚き火の炎をあてられているみたいに熱い。
 周りの空気が冷えている分、自分の顔が真っ赤になっているのがすごく分かった。
「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃない!」
「だってさー。お前、すっげー機嫌良さそうな顔して笑ってたぜ?自分の彼女が、隣で嬉しそうにニコニコしてたら、「何だろ」って気になんの…当たり前だろ。」
「!」
 照れ臭そうな顔で、私の事を「彼女」…って、平助君は言ってくれた。
 ずっとずっと、長い間。
 誰に揶揄われても「ただの幼馴染みだから!」って、強い口調で否定されてきた。
 私と平助君が「幼馴染み」なのは事実で、嘘でも何でもなかったけれど…「ただの」って言葉がつけられると、特別なのか何なのかがよく分からなくて、いつもモヤモヤしてた。
(やっぱり…そういう風に言われると、嬉しいな)
 お互い恥ずかしくて、「彼氏」とか「彼女」とか口にしない分、たまに言われるとやっぱり嬉しくなる。
 平助君中での「特別」に、ちゃんとなれたような気がして―――。
「…!」
(はっ…いけない、いけない!)
 今、すっごい顔が綻んじゃった!
 自分でもそれが分かるくらい、すごく緩んじゃった!
 今たぶん、私、すごくみっともない顔してる!
(わー、恥ずかしい!)
 慌ててペチペチと両頬を指先で叩いてると、首の周りにふんわりとした感触と黄色い何かが視界を過ぎった。
 ふわふわとした柔らかいものが、私の首から鼻の上くらいまでを包んでいる。
(…マフラー?)
 さっきまで、平助君の首に巻かれていたマフラーが、何故だかわからないけれど私の顔半分と首に巻かれている。
 私が平助君の方に顔を向けると、私に顔を見られないようにプイッとそっぽを向いていた。
「…平助君?」
「さ、寒そうだったから。そのマフラー、しとけよ。」
「でも、平助君は?寒くないの?」
「い、いいから!そのままでいろよ!」
「うん…?」
 その後、何かをブツブツ呟いていたみたいだけれど、平助君が顔を背けたままだったから、私には何て言っていたのかはちゃんと聞き取れなかった。
 それでも、繋いだ手はずっと離れなくて。
 お隣同士の家の前へ着くまでずっと…私の手は、平助君の手とほとんど繋がったままだった。

 「彼氏」と、「彼女」の距離で。



-了-

――― あとがき ―――
このお話は、PIXIVにて限定公開していた「幼馴染からお付き合いに変わっていった二人」のお話です。
「ほのぼのしていて、甘くて、和む感じのお話が書きたいなー」と思っていて、「やはり平助君と千鶴ちゃんだろ」と考えた結果がこのお話です。

幼馴染じみで、ずっと一緒に傍にいた人を、"兄弟以外の男の人"として意識したり、その気持ちを温めていったり……緩やかな時間を思い出しながら、今との違いにドキドキする。
甘酸っぱい話を書く為に、自分の中の遙かに遠い昔の事を思い出すのにめちゃくちゃ苦労しましたwww

最後辺りで、平助君が千鶴ちゃんに聞こえないようにブツブツ何かを呟いておりますが、そこは読み手の方々で楽しく想像して頂ければ幸いですwww

タイトルの「いち・たす・いち」ですが、「いつも一緒だった"二人"を、"一人の男の子"と"一人の女の子"として意識をし合うお話」という事で、このタイトルにしました。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

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となみかや

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薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
Pixiv: 4211441


※現在、WEB拍手は3作品です。
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