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2015/09/01

SSW・平助編 - all over again -

現代パロ。平千。ホワイトデーのお話。「SSV・平助編」の後日談。


 身を切られるような木枯らしから、軽い肌寒さを残す風に変わり始めた、三月の初め。
「ホント、平助ってバカだよね。」
「詰めが甘い…とも言うな。」
部活も終わり、オレが自分のロッカーに額を寄りかからせてため息をついた瞬間、右方向から容赦のねー言葉が飛んできた。
「…どういう意味だよ。」
俯かせた頭をそのままにして、オレが二人に向かってじろりと睨み付けると。
一くんはオレの反応なんておかまいなしに、一番奥のロッカーのドアに設置された鏡に向かってネクタイの結び目をチェックしてる。
総司は自分のロッカーからベージュのセーターを引っ張り出すと、袖を通しながら何かを企んだ顔のままオレをちらりと見てセーターをするりと着た。…嫌な予感がする。こういう時、絶対碌な目に合わねーんだよな。
「だってさぁ。折角千鶴ちゃんが、わざわざ平助の家まで―――っていっても、お隣さんだから大した距離じゃないけど。手作りのチョコを渡しに来てくれて、告白っぽい事までしてくれたんでしょ?それなのに、翌日風邪をひいて寝込むなんて、バカ以外の何者でもないでしょ。」
「…日頃の鍛練が足りぬ証拠だな。そもそも規則正しく健康的に過ごしていれば、風邪などひきはしない筈だ。」
いつもなら総司を止める役の一君も、今は総司と共闘してオレに辛辣な言葉を浴びせてくる。元々口数が多い方じゃねーから、こういう時の一君の言葉は抉るように痛い。何も言い返せねーオレは、ぐっと言葉を詰まらせたまま黙りこんだ。
 バレンタインの当日。千鶴は、わざわざオレん家までチョコを届けに来てくれた。
幼馴染みから脱出したくて、「義理とか感謝とかの意味?」って聞いたら、「どっちでもない」って答えが返ってきた。
その時は、タイミングが悪くて何も言えなくて。手作りのチョコを食べながら「明日ちゃんと告白しよう」って、考えてたのに。
翌日オレは、緊張で眠れなかった所為か風邪をひいて三日間も寝込んじまって。告白するタイミングを完全に失ったオレは、もう一度最初から仕切り直さなきゃならなくなっちまった―――。

「んな事言われたって…千鶴から、ちゃんと「好き」って言われた訳じゃねーし。千鶴だって、いつも通りの態度だしさ。何年も一緒にいる分、タイミングを計るのが大変なんだよ。」
「はぁ?タイミング?」
小馬鹿にするような総司の態度に内心苛つきながらも、オレは憮然として「そう」と何度も小さく頷いた。
「これでも幼馴染みって、結構大変なんだぜ?千鶴は死ぬほど鈍いし、薫の奴はいっつも邪魔してくるしさ。オレん家の親はオレの気持ちを知ってるから、事ある毎に余計な茶々入れてくるし……。オレだって色々考えて行動してんのに、変に干渉されるしさー…とにかく!色々、複雑なんだよ。」
「へぇ…平助も、大変なんだ。」
「そうだよ。これでも、苦労してんの!」
総司の気持ちがこもってなさそうな返事を背後で聞きながら、オレはもやもやした気持ちのまま乱暴に着替え始めた。
 ったく…何で、二人に色々言われなくちゃならねーんだよ。
オレだって「幼馴染み」の壁をとっとと飛び越えたいけど、こんな中途半端な時期に返事なんて「今更?」って感じだし。
それに鈴鹿からの情報だと、千鶴が家族と友達以外で男にチョコをあげたのは、オレだけらしい。つまり、今月のホワイトデーに千鶴に「お返し」が出来るのは、オレ一人って事だ。このチャンスを使わない手はねーと思う。
それでなくても、オレとあいつは幼馴染みっていう関係で。ガキの頃から一緒にいるからこそ、こういうイベントみてーなものを利用しねーと、また仕切り直しみてーな事になっちまうんだからさ。
制服に着替えて心の中で納得し終えたオレが、ロッカーの中から荷物を取り出してドアを閉めた瞬間。誰かから、後頭部を掴まれたような感触がして。

がんっ!

完全に油断してたオレは、そのまま目の前のロッカーに容赦なく額を打ち付けられた。
突然襲い掛かってきた衝撃と、じんじんと激しい額の痛み。思わず滲んだ涙の所為で、視界がぐにゃりと歪む。
 い…ってぇ……!!
「…っに、すんだよっ!?」
怒りに任せて後ろに振り向くと、口の端を上げて腹黒く笑う総司と、冷たい眼差しの一君が目の前にいて。一君は無言でオレに手を差し出したかと思うと、おそらく総司がやりやがった箇所を中指で思い切りばちん、と弾いてきた―――いわゆるデコピンって奴だ。
二重の痛みに悶絶しながら、オレが涙目で「だからっ…さっきから何なんだよ、二人共っ!!」と叫ぶと。
「…お前は、いつまで千鶴を待たせるつもりだ?」
一君が鋭い視線でオレを見据えたまま、静かな怒りを含んだ口調でオレに問いかけてきた。
「…は?」
額を擦りながら、オレが「千鶴なら、今日は用事があるからって先に帰ったけど」と怪訝な顔で答えると、二人はこれ見よがしに深いため息をついた。…何なんだよ、その態度。
「バカだバカだとは思ってたけどさ…ホント、ここまでバカだとは思ってなかったよ。」
「なっ…何だよ、それっ!?」
オレが総司にくってかかろうとすると、一君から「平助」と咎めるような声で呼ばれた。
「先月の十四日…お前は千鶴に、貰ったチョコの意味を質問したのだろう?その問いに千鶴は、曖昧なものとはいえ…答えを出した。その後、お前は何をしていた?」
「え…?」
ちょっと待てよ、何って―――…?
「…あのさ。勇気を出してバレンタインに意思表示したのに、相手から「なかった事」みたいにいつも通りの態度をとられた人の気持ち、考えた事ある?あの子が今まで、どんな気持ちで君の隣にいたと思ってるの。いくら暢気なあの子でも、平気な筈ないじゃない。」
心底呆れたような口調で投げつけられた総司からの言葉に、オレはハッとした。
 そうだ―――オレがモタモタしてたから、結局は何もかもが宙ぶらりんで。
オレの所為で気まずかった筈なのに…それなのにあいつは、オレを気遣って普段通りに振る舞ってくれてたんだ。そんな事にも気がつかずにオレは、あいつの優しさにずっと甘えてて。
ずっと「幼馴染み」の壁を飛び越えようとしなかったのは、オレの方じゃんか……!!

  「平助君」

今朝も一緒に登校して、健気にいつも通りの態度で笑っていたあいつの顔を思い出した。
「総司!一君、ごめん!オレ、先に帰るから!戸締り、よろしくな!」
慌てて自分の荷物を抱えながら二人に言うと、オレは部室を飛び出して家路を急いだ。
オレンジ色に染まる舗道。夕陽の光に照らされて、ますます影が濃くなる信号機。白い木蓮の花をふわりと散らす春先の風が、温い風から夕暮れの冷たい風に変わってきていた。
息が切れて、横腹が痛い。憂さを晴らす為に部活で散々暴れてたから、殆ど体力なんて残ってなかった。でも、それでも…一秒でも早く―――あいつの顔が見たかった。


 ふらふらする足に力を込めながら震える指でインターホンを鳴らしてみたけど、千鶴の家は誰もいなかった。
「まだ、帰ってきてねー…か……。」
緊張と疲労で一気に力が抜けてきて、そのまま家の門の柱に背中を預けて寄りかかる。背中を預けた柱のごつごつとした感触。座り込んで目線が低くなっている所為か、ガキの頃に暗くなるまで一緒に遊んでいた事を思い出した。
「…平助君?」
聞き覚えのある足音が近づいてくると共に、高い女の子の声で遠慮がちに名前を呼ばれた。そっと見上げると、暗くなりかけた群青色の空に、ポニーテール姿の千鶴が不思議そうに首を傾げながらオレを見下ろしている。
「千鶴…。」
ガキの頃からの思い出が、まるでアルバムを捲るみてーに鮮明に浮かんでは消えてく。いつもオレの隣にいて笑ってた、女の子。ずっと傍にいた、オレの大事な―――千鶴。
「どうしたの、うちの前に座り込んで…あ!また、おうちの鍵を学校に忘れちゃったの?それなら、おばさまが帰ってくるまでうちで休んでいったらどうかな?平助君の好きな…ココア、入れてあげるよ。」
門を開けながら話す千鶴は、やっぱりいつもとはどこか違ってて。不安げに揺れる瞳とか、眉を下げて無理やり笑う顔とか、ゆっくりと言葉を選ぶ間のとり方とか…オレは本当に総司の言う通り、バカだったんだなと思った。
「千鶴。」
「え?」
千鶴は、きょとんとした顔でオレに顔を向けてくる。暗がりの中、門の上に設置された外灯に照らされた千鶴の顔は、オレが今まで「知っている」と思い込んでたどんな千鶴よりも綺麗に見えた。
今まで、「どんなシチュエーションで言えばいいんだろう」とか、「どんな言葉で伝えればいいんだろう」とか、そんな事ばっかり気にしてたのに。いつもの自分からは想像も出来ねー位穏やかな気持ちで、オレは思った通りの言葉を口にする事が出来た。


 「オレさ…お前の事が、ずっと好きだったんだ。」


 今までずっと、長い間抱えてきた想い。
千鶴はたぶん、真っ赤になって「もう十分だから」って言うかもしれねーけど…全部言っちまわねーと、気が済まねーし。
もしかしたら、全部なんて言い切れねーのかもしんないけどさ。
それでも、言い終わるまで……聞いてくれるよな?
春の初めの風はちょっと冷たかったけど、これから来る花の季節が幸せなものになると確信したオレは、知らない女の子みたいに真っ赤な顔で恥ずかしそうに笑ってる千鶴にそっと笑いかけた。


-了-

――― あとがき ―――
このお話は、「SSV平助編」その後のお話です。

SSVで「学校内でのバレンタイン活動は禁止」だった為、千鶴ちゃんは平助君のおうちまで行ってチョコを渡してくれました。
幼馴染みの関係を打破したい平助君が「チョコの意味」を聞いたところ、「義理でも感謝でもない」という答え。
「翌日告白するぞ!」と息巻く彼ですが、風邪をひいてしまい結局は仕切り直しとなってしまいました……という、お話の続きです。

彼は千鶴ちゃんと幼馴染みの為、「俺だって男なんだからな!」と千鶴ちゃんに「異性」として意識して欲しいが為に、色々と手を考えています。
彼女は鈍いし、薫という強力な小姑が控えている為、思うように事が運ばないんですね。実際は、風邪をひいた彼の自業自得な部分もある訳ですが。
でも普通に考えたら、彼は折角の千鶴ちゃんからの言葉をそのままスルーしちゃっている事になる訳です。幼馴染みという「長年の温い関係」に、胡坐をかいちゃっているんですね。
そのあたりを沖田さんと一さんに、痛みと共にビシッと突っ込みを入れてもらいましたw

彼等はチョコレートを貰えなかった組です。対する平助君は、唯一チョコレートを貰った男の子。しかも「義理じゃない」という言葉付きです。
この当たりで、二人の千鶴ちゃんへの思いは一方通行さんだと確定されてしまう訳ですが、当人である平助君はそれに気がついていません。それどころか、千鶴ちゃんの答えをスルー。この状況に、彼等は怒りを覚えずにはいられないだろうと;
彼等は、「どんな理由でも、千鶴ちゃんの泣く姿は見たくない」というスタイルです。

その後、平助君が必死に千鶴ちゃんのところへ行き、やっとの思いで告白をする訳ですが、SSVの時は平助君の家の前で千鶴ちゃんが、今回のSSWでは平助君が千鶴ちゃんの家の前で、というように対比させています。
「お隣さん」という環境をちょっと意識させたかったので、わざと対比させてみました。

いつも一生懸命で緊張しながら必死になる…という事が多い彼ですが、今回はきちんと大人になってもらいたかったので、告白の台詞もするっと言えた、という展開にさせてもらいました。

サブタイトルの「all over again」は、「仕切り直し」「最初からまた始める」という意味なんだそうです。
平助君の「告白の仕切り直す」、二人が「新しい関係を築き直す」という意味をこめました。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : SSV

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となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
Pixiv: 4211441


※現在、WEB拍手は3作品です。
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