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2015/09/01

SSV・平助編- two alternatives -

現代パロ。平千。バレンタイン2011SSVシリーズ」。



 ―――あと三時間で、今日が終わっちまうなぁ……。
オレは自分のベッドに仰向けに寝っ転がると、大きなため息をついた。
今日は二月十四日。バレンタインデーだ。
世間ではチョコレートについての話題が事欠かねーってのに、学校中の男連中は沈みきってた。勿論、オレもその中の一人だったりする。
理由は、学校側から通達された「バレンタイン禁止令」の所為だ。

 オレが通ってる薄桜学園には、オレの幼馴染みの雪村千鶴しか女子がいない。軽く三桁を越える野郎共の中に、女子が一人。これはもう、競争率が高いとかいうレベルの問題じゃなくて。
四六時中、野郎同士で牽制が牽制を呼び合ってる所為で、いつも千鶴は高嶺の花っていうか、癒しの象徴みたいな…「マスコット」みてーな扱いをされてるんだけど。
さすがにバレンタインが近くなると、男の見栄とかそういうので、皆の闘争本能に火がついちまって。下手すると、チョコ一つでいつ喧嘩が起きてもおかしくねー状況だった。
文字通り「血のバレンタイン」になりかねねーと思ったのか、学校側は「学校内で、生徒間による菓子類の配布は一切禁止」という校則を急遽作っちまった。
結局千鶴はその校則をきちんと守り、準備して持ってきたバレンタインのチョコレートは、結局誰にも渡さなかったらしい。
内心はすごく残念だっただろーけど、千鶴は嘘なんかつけねーし、何しろ真面目だからなー…校則違反をする気にもなれなかったんだと思う。
そんな訳で、オレを含めて千鶴の事を気にかけてる野郎共のささやかな期待は、木っ端微塵に粉砕されちまった―――。

やり場のないもやもやした気持ちが、オレの胸の中にずっと残って消えてくれそうにない。
勿論チョコが貰えなかった所為もあるけど、それ以上にあいつの兄貴―――薫から、放課後に言われた言葉の方がずっと重たくのしかかってた。

 「可愛い妹が、校則違反をするような不真面目な生徒じゃなくて本当に良かったよ。まぁどうせあいつの事だから、家でオレや父さんの分位は作ってそうだけど。残念だったね、千鶴からチョコを貰えそうもなくて。まぁ、お前はただの幼馴染みだからな。彼氏って訳でもないから、別に関係のない話か。」

…本当の事だけに、すごくムカついた。
 そりゃ確かにオレは、ただの幼馴染みだけどさ。でも、あんな風に言う事ねーじゃんかよ。
でも…よくよく考えてみたら、実際「幼馴染み」っていうオレの立ち位置って、分がある方なのかな。それとも、ねー方なのかな。
そりゃー他の奴等と比べたら、それなりに付き合いは長いけど。でもその分、男として意識されてるのかっていうと、違うような気もするし。
何しろあいつの周りには、「あわよくば…」って奴等がいつもうろちょろしてるし。
 あー…もう、全然分かんねー!
オレがごろごろと寝返りをうって、何度目かのため息をついた時だった。
ピンポーン
こんな夜遅くに珍しく、来客を知らせるドアホンの音が鳴った。
お袋は、単身赴任先の親父のところからまだ帰って来てねーから、オレが出るしかない。
仕方なく一階に下りて、リビングに設置されたドアホンのモニターを見ると。
 千鶴!?
小さな画面の中に私服姿の千鶴が、きょろきょろとしきりに周りを気にしながら「平助君、今、いいかな?」と小さな声で問いかけてくる。オレは千鶴に返事をするのも忘れて、玄関に猛然とダッシュした。

「こんな時間にごめんね、平助君。」
千鶴は両手を後ろに組んだまま、小首を傾げて申し訳なさそうに謝って来た。
「別に…んな事は、どうでもいいけどさ。玄関だと、寒いだろ?中に入れよ。」
「あ、ここでいいよ。薫がお風呂に入ってる間に、ちょっと抜けてきただけだから。すぐに帰らないといけないし。」
「そ、そっか。」
「…」
「…」
微妙に気まずい沈黙が流れる。
こんな遅い時間に、薫の目を盗んでオレん家に来るって事は、「今」じゃねーと駄目だっていう理由がある訳で。それって、もしかして例の事なのかなって期待しちまうのは、もう仕方ねーと思う。
どうやって話しかけたら良いか分からなくて、オレが悩んでると。
「へ、平助君!これっ…!」
さっきまで後ろに組んでいた小さな腕が、オレの目の前に出されて。その手には、ピンクの小さな袋が握られてた。
薄いピンク地に、白いレースのリボンがプリントされた小さな紙袋。たぶん、オレが今日一日、ずっと欲しかった物だった。
「あ…ありがと。」
これって…どっちの意味の物なんだ?
戸惑いながらもオレが紙袋を受け取った瞬間、千鶴は真っ赤な顔をして「じゃあねっ」と走り去ろうと踵を返した。
「ちょ、ちょっと待った!」
オレは千鶴の小さな肩を掴むと、ぐいっと強引に振り向かせた。
「なぁ…これって、どっちの意味?」
「えっ」
「いつも通りの、感謝チョコ…って奴?それとも…」
真っ赤になった千鶴の顔は、困っているのか悲しんでいるのかよく分からなかった。眉をハの字にして、今にも泣きそうな顔をしてる。
 …ちゃんと、言ってくれよ。
友達でもない、恋人でもない…どっちつかずの「ただの幼馴染じみ」なんて、オレはもう嫌なんだ―――。
その時だった。
 「千鶴ー!千鶴!おい、どこにいるんだよ!千鶴!」
オレん家の隣にある千鶴の家の中から、薫の不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「も、もう帰らないとっ!じゃあね、平助君っ!」
「あっ…千鶴っ!」
千鶴はオレの手からするりと抜け出すと、そそくさと自分の家の門をくぐり、玄関へと向かってく。
 また、仕切り直し…か。
オレって、タイミング悪いっていうか、今ひとつカッコつかねーよな……。
今のだって、絶対無駄な期待だったよなー……。
重たいため息をついて家の中へ戻ろうとドアに手をかけたオレに、「平助君」と小さくオレを呼ぶ声が聞こえた。返事もせずに「ん?」と視線だけを千鶴の方に向けると、まだ顔を赤くさせたままの千鶴が、オレに向かってにこりと笑ってきて。

「感謝チョコでも、義理チョコでも…ないからね。」

そう言うと、いつもの倍は早い動きで、そそくさと家の中へ入っていった。
「…」
 ちょっと待った。
今、あいつ―――何て、言った?
感謝でもなくて…義理でもないって…え?ちょっと、待て……え?あれ?
えぇ……!?

強い木枯らしが吹きすさぶ、玄関先。
紙袋を持ったまま、混乱する頭を必死で整理しようとするオレが一人、赤い顔でその場に固まっていた。


-了-

――― あとがき ―――
このお話は2011年のバレンタインに公式で「クリスマス禁止」というお話があったので、「バレンタインも禁止!?」と思ったのが、「SSV」を作ったきっかけです(当時はSSLでゲーム化する話すらありませんでした)。

平助君のお話は、まず「禁止令が出たら、千鶴ちゃんは真面目なので無視したりしないだろうなあ」と思いました。
そして彼は、まぁおそらく「そんなの別にいいじゃん!持ってきちゃったもんは仕方ねーし、配っちゃえよ!」とか何とか言って説き伏せようと頑張ったんじゃないかなぁと。
まぁ、ある意味頑固な千鶴ちゃんから「校則で決まったから、駄目だよ!」とか言われて、無理だったと思います。
平助君は千鶴に無理強いをするタイプではないので、貰えない事に凹んでそうだなぁ、と。
そして更に薫が追い討ちをかけていそうだ…と思ったので、あんな感じで嫌味を言わせてしまいました;
薫ファンの方、すみません;

千鶴ちゃんも、学校では「駄目」とは言ったものの、折角作ったチョコを幼馴染じみでお隣さんの平助君に渡さない訳ないよね、と思って、おうちに突撃する!という展開にさせて頂きました。
薫が邪魔をしない筈がないので、彼がお風呂に入っている隙にこっそり外出してもらいました。彼にバレたら、物凄く止められていそうだったので。

サブタイトルの「two alternatives」は、「二つの選択肢」、「二者択一」などの意味があるそうです。
幼馴染みとしての感謝チョコなのか、それとも…!?という意味が含まれています。
あの後、悶々と悩んだ平助君は見事に風邪を引いてしまいました…というオチですw;

チョコがもらえた翌日、今までとはちょっと違うかもしれない想いを抱いた状態で、一緒に手を繋ぎながら登校が出来た筈なのに…という、何とも残念な展開だったという裏話があったのでしたw;

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : SSV バレンタイン2011

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薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
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