--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2015/08/31

ジレンマ平助編・肆 - Hung in there! -

幕末設定。平千。 恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。



 新八っつぁん達四人を撒きながら千鶴を探すのは、至難の業だった。
四人の中の誰かから逃げる時に限って、千鶴を見つけちまったり。逆に、千鶴に声をかけようとした時に、追手の誰かに見つかっちまったり。それが何度となく繰り返され、結局オレは千鶴とまともに話す事が出来ずにいた。

日が傾きかけた夕暮れ時。今なら洗濯物を取り込んでいるかも―――そう思って、オレが物干し台のある庭へ足を向けると。
 …あれ、もう片付けられてる。
物干し竿にかけられてた洗濯物は全部取り込まれてて、手拭いの一枚すらも見当たらなかった。
西日の光が眩しく庭を照らす中、二匹の秋茜がオレのすぐ横を滑るようにすいーっと飛んでく。思わず目で追った視界の先には、薄暗がりの部屋の中、せっせと洗濯物を畳む千鶴の姿があった。
 …いた!
千鶴は、庭先から部屋の前まで近づいてきたオレに気付く様子もなく、もくもくと洗濯物を丁寧に畳んでる。「熱心だなぁ」とオレが思った時、てきぱきと手早く動く小さな手が、急にぴたりと止まった。不思議に思って千鶴の手元に視線を移すと、山切り模様の白と浅葱の布地が見えた。誰かの隊服のようだ。
 あれ…あの隊服って、もしかして……?
左の袂を見ると、見覚えのある縫い直した跡が目に留まった。間違いない、オレの隊服だ。ちょっと前、巡察の時にひっかけちまって、千鶴に直してもらったやつだ。
千鶴は大きな瞳を細めて小さく微笑むと、今まで以上にゆっくりと丁寧な手つきで隊服を丁寧に畳んで、そっと自分の膝の上に置いて隊服をそっと撫でた。頬の辺りが赤くなってるように見たのは、気のせいじゃねーと思う。
「千鶴っ!」
思わず、大きな声が出ちまった。どうしても、声をかけてみたくなった。オレの隊服を嬉しそうに畳んでる千鶴と、ちゃんと―――話がしたいと思った。
「きゃっ!」
オレの声に驚いて千鶴が身を固まらせた瞬間、膝の上にあったオレの隊服が転がり落ちる。隊服はぐしゃりと倒れこんで、綺麗に畳まれてた姿はもう見る影もなくなっちまった。
「あ…わ、悪い。片付けんの、大変そうだな。手伝おうか?」
「え、でも…。」
「遠慮すんなって。それ、オレの洗濯物も入ってるんだろ?たまには、そういう仕事もちゃんとやんねーとな。」
オレは縁側から部屋へ上がりこむと、人一人分くらいの距離を開けて、千鶴の隣に座った。千鶴は小さな声で「ありがとう」と呟くようにオレに礼を言うと、またもくもくと洗濯物を畳み始める。まずは作業を終わらせる事に専念しようと、オレも手近に転がってた手拭に手を伸ばした。


「…よし、これで終わりっと!」
オレが、重ねられた羽織の上に最後の一枚をぽすんと置いて、洗濯物の束を分けようとした時だった。
「あ…あのっ、平助君!」
切羽詰ったような、千鶴の声。顔を上げると、大きな瞳に涙を滲ませた千鶴がオレに向かって勢い良く頭を下げてきた。
「ごめんなさいっ!」
 ……は?
驚いて声も出ないオレに、千鶴は頭を下げたまま話を続けた。
「私、平助君の気持ちを全然考えてなかったよね。いくら頼み事をされたからって、土方さんの言いつけを破ってまでする事じゃなかったよね。平助君が気を悪くするのも、当たり前だと思う。本当に…ごめんなさい。だから、あの……。」
千鶴が紡ぐ言葉は涙で震えてしまって、最後まで言えずにとうとう途切れてしまった。俯いているせいで顔は見えないけど、明らかに今にも零れそうになる涙を堪えてる所為だと思う。 
千鶴が、悪いと思って必死で謝っているのは分かったけど……一体何の話だ?
謝んなきゃいけねーのは、むしろオレの方だし。千鶴はたぶん、「自分が何か気に障るような事をしでかしたに違いない」って思ってんだろーけど。でも、オレが気に障るような事っていうと……?

 「何だよ、それ。巡察前の見送りなんて、オレにもしてくれた事ねーじゃん…何で総司に?」

 ―――あ!!
オレは、三日前の夜の事を思い出した。総司に頼まれて夜の巡察前に見送った事に、オレが怒ったと思ったようだ。だから、気を悪くして避けてるんじゃねーのかと思い込んだのか。
いや、実際オレもちょっとはむかついたけど、あれは千鶴が悪い訳じゃねーし。それに、オレが勝手に千鶴を避けてたんだし。そもそも自分が悪いのに、このまま千鶴の事を悪者になんか出来ないと思った。
「…そうじゃねーよ。」
「え?」
千鶴が顔を上げた瞬間、大きな瞳から一粒だけ、ぽろっと涙が零れ落ちた。オレは慌てて、千鶴の頬に流れる涙を指で拭う。こいつが泣く必要なんて全然ねーし、泣いた顔は見たくなかった。
「…あのさ。オレ、お前と気持ちが通じ合えてるの、本当に嬉しいって思ってるんだ。でも…何か、自分の気持ちの調整が、上手く出来ねーんだよ。でもそういうのって、何か格好悪いって…そう思っちまって。だから…オレが勝手にお前を避けてただけなんだ。だから、千鶴は全然悪くなんかねーよ。ほんとに、ごめんな。」
オレが謝った瞬間、驚いて固まってる千鶴の顔がみるみるうちに、くしゃりと歪んで。自信がなさそうに肩を小さくさせて、涙を滲ませた大きな瞳でじっとオレの顔を見つめたまま、震えた声でオレに聞いてきた。
「じゃあ私…平助君に、嫌われてない?」
はぁ!?
「あ、あったり前じゃん!!オレが何で…!」
思わず声を荒げた瞬間、千鶴の大きな瞳から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。柔らかそうな頬に涙の線がいくつも出来て、細い顎の先から落ちる涙の雫が、襟元をどんどん湿らせてく。
やべっ、泣かしちまった!!
「ご、ごめんっ!ごめんな?オレが悪かったから!な?だから、ちづ―――」
  ―――良かった。
小さな唇から、そんな言葉が零れた気がして。思わず「え?」と聞き返すと。
「平助君に嫌われてるんじゃなくて…良かった。」
涙をごしごしと拭いて、千鶴はオレに笑いかけてくれた。花が綻ぶような、優しい笑顔。オレが、ずっと見たかった笑顔だった。
「…嫌ったりなんか、しねーよ。絶対。約束する。」
「うん。」

 絶対に、何があっても嫌いになんかならねーよ。
千鶴の親父さんだって、オレが見つけてやる。
オレが、千鶴を守ってやるんだ―――。


 そう決意をした、翌日。
会議の後、またオレは例の四人に取り囲まれちまった。
「さぁ平助、とっとと吐けよ。一体千鶴に何しやがったんだ?」
「いい加減吐いたら?言葉と行動次第じゃ、ただじゃおかないけどね。」
「お前、今朝からずうっと、千鶴ちゃんに避けられてるだろ。」
「平助。千鶴の様子がおかしいのは、お前に対してのみだ。一体何をしでかした?」
一斉に発した言葉と共にオレをとり囲んでいる八つの瞳が、また針のように冷たい視線でオレをその場に縫い留めようとする。
「べ、別に何もしてねーよっ!!」
オレは四人に向かってきっと睨みつけると、出来る限りの気合を込めて吠えた。四人は疑り深い視線でオレを睨みつけてくるけど、今回ばかりはオレも負けられねー事情があった。
 正直になんて、絶対言えねー…!
やっと千鶴と仲直りできたから、やっとぐっすり眠れると思って寝てたら、寝過ごしちまって。
起こしに来てくれた千鶴を、寝惚けてたオレがまた「あの夢」を見てるのかと勘違いして、千鶴を抱きしめちまったなんて!!
 言ったら、確実に殺される……!!
結局、四人にまた追いかけられながらもオレが千鶴とちゃんと仲直りが出来たのは、それからずっと先の事だった―――。


-了-

――― あとがき ―――
このお話は、「千鶴ちゃんとの関係でオロオロ、苛々、ハラハラする」という本編と違う捏造話です。
やはり平助君のキャラを考えると、皆に弄られるとか。うっかり言動で自爆するとか。そういったものが楽しそうだなーと思い、非常に若さ溢れるお話になりました。

彼は、自分の男らしさについてコンプレックスに近い感情を持っていそうなので、他の隊士にあからさまに嫉妬したり、悩める青少年で若さ爆発をしてもらいましたw
平助君のキャラなら「あんな夢を見ても許してもらえるよね!w」と思ったのがきっかけです。

最後のオチですが、サブタイトルの意訳「負けるな、頑張れ!」という事を大事にしたかったので、問題が解決してるようなしてないような…というラストにしたくて書きました!
こんなラストも、平助君なら許されそうだなーと思ったからです;

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・平助編

<< 目醒めた想い・壱 - I told the trifling lie - ジレンマ平助編・参- Hung in there!- >>

コメント

コメントの投稿

URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 

 BLOG TOP 

プロフィール

となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
Pixiv: 4211441


※現在、WEB拍手は3作品です。
龍鈴(薄桜鬼)/原千(薄桜鬼)/
薬研&光忠(刀剣乱舞)

カテゴリー

シリーズ(完結済)

薄桜鬼。2話~の作品。完結済。
◆ジレンマシリーズ
沖田編 1234
斎藤編 123456
平助編 1234
原田編 123
土方編 123456

◆対決シリーズ
沖田VS平助 沖田編平助編
原田VS土方 原田編土方編

◆片思い対決(色)
沖田VS斎藤 沖田編斎藤編

◆SSV(バレンタイン)
沖田編
斎藤編後日談
平助編後日談後日談2
原田編
土方編
山崎編(移行中)

◆雨上がりの行方(沖千斎)
沖田編斎藤編

◆翻弄しないでくれる?(沖千)
本編番外編

◆幸福を得た獣(土千)
本編番外編

◆果てなき心(原千)
前編後編

◆笑顔に会いたい(平千)
前編後編

◆祈り結く声(平千)
前編後編

◆目覚めた想い(平千)
1234

メールフォーム


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。