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2015/08/31

ジレンマ平助編・壱- Hung in there!-

幕末設定。平千。 恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。



 ―――オレって、そんなに男らしくねーのかな。
そりゃ新八っつぁんみてーな筋肉はねーし、左之さんみてーに、余裕のある大人な態度なんて出来ねーけどさ。
でも、オレだって一応、歴とした男なんだけど。
そこんところを、あいつは全然分かってねーよな……。


「平助君、すごく美味しいね!」
オレが土産に買ってきた饅頭を半分に割って一口目を口に運んだ途端、千鶴は大きな瞳をもっと大きく見開いて、満足気に笑った。
「だろ!?ここの店、すげー美味いって評判なんだぜ。千鶴、甘いもん好きだろ?気に入るんじゃねーかな、と思ってさ。」
「うん、ありがとう!」
嬉しそうに笑う千鶴からお礼を言われて、オレは上機嫌で湯飲みの中の茶を飲んだ。
晩飯の片付けを終えた後、オレは自分の部屋で千鶴と、食後の休憩をとってる。
目の前には千鶴が淹れてくれた温かい茶と、オレが買い付けに行った時に買ってきた、久喜屋の饅頭が数個、盆の上に置かれてた。
久喜屋は、最近評判の甘味処だ。いつも日暮れ前には品物が全部売り切れちまう位の人気ぶりで、オレは前から千鶴に何か買ってきてあげたいと思ってた。
土産を手に帰った早々、庭掃除中の千鶴に声をかけて茶に誘うと「じゃあ晩御飯の後で」と、色好い返事を貰った。オレは珍しく自分の部屋の掃除なんかして、千鶴を招き入れる為の準備をした。そして今に至ってる。

 部屋の外では、いろんな虫達が静かに合唱してる。涼しさと静寂さを纏った、秋の夜の空気だ。こんなのも、たまには悪くねーかなー…って、あれ?
「そういや、総司は?あいつが千鶴にちょっかいをかけてこねーのって、珍しいな。」
二個目の饅頭を食べた後、オレはふと総司の事を思い出した。
いつも目ざとく千鶴を見つけては、楽しそうに揶揄って遊んでる総司。千鶴に気があるのか、それともただ単に玩具にして遊んでるのか―――オレにはよく分かんねーけど、目を光らせておかねーと不味い相手なのは確かだ。
「沖田さんなら、巡察だよ。さっき、私がお見送りをしたから。」
「見送り!?」
オレが聞き返すと、千鶴は小首を傾げてきょとんとした顔でこくりと頷いた。
「何だよ、それ。巡察前の見送りなんて、オレにもしてくれた事ねーじゃん…何で総司に?」
嫉妬で苛つく気持ちを抑えて、オレは胡坐を組み返した。何となく居心地が悪くて、自分の髪をばさっと後ろに撫で付ける。
「えっと…「見送りしてよ」って、沖田さんから頼まれたの。私、土方さんから「夜はなるべく一人で部屋から出るな」って言われてるでしょう?だから「よろしいんですか」って、一応聞いたんだけど…「たまには役に立ってよ」って、言われてしまって……。」
千鶴は眉を八の字に下げて、しょんぼりした顔でオレの顔をちらちらと見ながら告げた。千鶴は生真面目だから、たぶん土方さんの命に背いた事を気にしたんだと思う。
出来れば、オレに対してちょっとは申し訳ないと思ってくれると嬉しいんだけど…まー千鶴だしな。余計な期待は禁物だ。
それにしても、千鶴が絶対断れねーような言い方しやがって…やっぱり総司は、抜け目がねーよな……。
「平助君?あの…?」
千鶴は、俯いているオレの顔を覗き込んで「何か、怒ってる?」と聞き返してきた。でっかい目で上目遣いで見てくる顔に、思わず「可愛い」とか思っちまうのは、もう仕方ねーと思う。惚れた弱味ってやつだよな。ちょっと悔しいけど!
「別に…見送り位、良いんじゃねーの?総司に、無茶を言われただけなんだし。」
オレの言葉に、千鶴は「そうかな」と、ほっとした顔で縮めていた肩を下ろした。実際千鶴が悪い訳じゃねーし、今度の巡察の時にオレも見送ってもらえばいいや。…総司よりも後っていうのが、ちょっとむかつくけど。
今以上に総司を危険人物だと認定したオレは、出来るだけ奴を千鶴に近づけさせないようにしようと心に誓った。
「一君は、さっき山崎君と何か話してたみたいだから…たぶん仕事だよな。」
「さっき会議中の大広間へお茶を運んだ時、斎藤さんも一緒だったよ。近藤さんと土方さんと伊東さんの三人分しか用意してなかったから、私すごく慌てちゃって。引き返そうとしたら、斎藤さんが「自分はすぐに外出するから問題ない」って言ってくれたの。寡黙だけど、優しいよね。」
千鶴はのんびりと笑うと、持っていた湯飲みを口に運んだ。
…何でそこで、オレの前で他の男を褒めるんだよ。いや、確かに一君は良い奴だって、オレも知ってるけど。でも、そういう問題じゃねーし。
ちょっとむっとしたけど、心の狭い男には思われたくねーから平静を装う事にした。オレだって、男としての矜持は持ってるし!
「一君は無口だから、ちょっと分かりにくいかもな。つーかさ!小言を言いそうな人達がうろついてねーからって、左之さんと新八っつぁんなんか、部下の隊士達を連れて島原へ飲みに行っちまったんだぜ。オレも誘われたけどさ。後で土方さんにバレたら、雷落ちそうだよなー。」
オレがさりげなく話題を変えると、千鶴は急に黙り込んだ。大きな瞳で、オレの顔をじっと見つめてくる。やっぱり、ちょっとわざとらしかったか?

「…平助君。」
「な、何?」
大真面目な顔をしている千鶴の口から発せられる言葉に嫌な予感を感じて、思わずちょっと身を引いた。我ながら情けねーとは思うけど、怒っている時の千鶴は意外と頑固で、別の意味ですごい勢いがあるからちょっと困る。
「どうして、原田さん達と一緒に行かなかったの?」
「…は?」
予想外の言葉に、思わず間抜けな言葉が零れた。
「だって、いつも仲良しだから。お二人に誘われたら、いつも遊びに行ってたでしょう?…もしかして、お二人と喧嘩しちゃったとか?」
千鶴は心配そうな顔をして、俺の顔を覗き込んできた。千鶴の頭の中では、オレと二人は「いつでもどこでも仲良し」という図になっているみたいだった。
「いや、別に喧嘩なんかしてねーよ。それに、いつでもくっついてるって訳でもねーしさ。」
「でも平助君、お二人と一緒に、お酒飲んだり遊んでくるの好きだし…。」
まるで叱られた子犬みてーに申し訳なさそうな顔で、千鶴は「平助君も、行きたかったでしょう?」と言ってきた。
どこの世界に、好きな奴との約束を反故にして野郎と遊びに行く馬鹿がいるんだよ。いや、世の中にはいるかもしんねーけどさ。少なくとも、オレがそんな奴だと思うのだけは勘弁してくれ。
「そんな事ねーよ。左之さん達に誘われる前に、先に千鶴との約束があったし。お前と一緒にいるって…オレ、ちゃんと約束したじゃん。…それとも、遊びに行っちまった方が良かったのかよ。」
さっきまでの苛々とした気持ちが蘇ってきて、オレは目を伏せたまま思わず低い声で千鶴に聞き返した。千鶴が少しびくりと肩を震わせたような空気がして、「しまった」とすぐに後悔した。
「ち、違うよ。そんな事思ってない…!」
千鶴は否定するために首をふるふると振ったみたいで、ぱさぱさと髪が揺れる音がした。それでも何を言ったらいいのか分からなくて、オレがそのまま俯いてた時だった。

 小さく、一呼吸置いた気配がして。恥ずかしそうな零れるような口調で、「ありがとう」という言葉が降ってきた。
オレが思わず顔を上げると、花が綻ぶような千鶴の笑顔が―――そこにあった。
「約束を守ってくれた事…嬉しいよ。ありがとう。」
そう言って、揺らめく蝋燭の灯りに照らされた千鶴の笑顔は、昼間に太陽の下で見たものとは別物みたいで。
ぼんやりとした柔らかい光は、千鶴の肌の白さとか、艶やかな黒髪とか、きらきらした大きい瞳を更に際立たせてた。
「べ…別にっ、そんな大した事じゃねーよっ!そうだっ…茶!もう一杯、貰っていい?」
胸の奥がどきりと大きく鳴った事を隠したくて、思わず千鶴から視線を外した。いつのまにか空になっていた湯飲みを殴るように手にとって、千鶴がいる方にぐいっと差し出す。
千鶴はふふっと小さく笑うと、「どうぞ」という言葉と同時に湯飲みに茶を注いでくれた。冷たかった湯飲みが、注がれる茶の温もりでだんだんと温まってくる。
「ありがとな。」
「うん。」
千鶴も自分の湯飲みに茶を淹れて、二人で笑い合って口につける。
何か、こういうのって良いよな。のんびりした空気で、好きな奴と一緒に茶を飲んでくつろいで。まるで―――あれ?
 なん、か。こういうの、って。
夫婦みたい、じゃねーか?
自分で思い当たった今の状態に、思わず身を固まらせた。

 想いを告げ合った若い男と女が、夜更けに、しかも男の部屋で二人きり。

考えてみたら、オレ達の今の状況は、まさにそれだ。
いろんな気持ちとか想像とかが急に頭を駆け巡ってきて、頬が熱くなってきたのが分かった。何か、色々とやばい気がする。これは…ちょっと、不味いって!
じっとりと汗ばんでくる両手を膝の上でごしごしと拭いて、オレは気分をどうにか落ち着けようと、小さく深呼吸をした。落ち着け!落ち着け、オレ!
「平助君?どうしたの?」
オレの苦悩に感づいた様子もなく、もう一人の当人はオレの隣にちょこんと座ってにこにこと暢気に笑ってる。
 この様子だと、千鶴は確実に気づいてねーな…いや、オレもついさっき気がついたから、人の事を言えた義理じゃねーんだけど。
そもそもこの状況で、何にもしねーで二人で仲良く茶を飲んでんのって、ありなのか?長年連れ添った夫婦じゃあるまいし。色気も何にもねーじゃんかよ。
顔を俯かせて思い悩むオレの視界の隅で、饅頭を食べながら不思議そうな顔をしてる千鶴の姿がちらりと見えた。
 …そうだった。こいつは、決定的に鈍いんだった。
よくよく考えてみれば、「晩御飯の後にオレの部屋」っていうあたりで、全く警戒されてねーよな。そりゃ、信頼されてんのは嬉しいけどさ。それにしたって、少しは男として意識してくれてもいいんじゃねーの?
千鶴のあまりの鈍さに悲しくなって、軽く睨んでみたけど。でもそんな事で気が付く位なら、オレは今悩んでない。

 でも…無理して、傷つけたくねーし。何より、千鶴に嫌われたくねーし。
ちゃんと、大事にしたいとは思ってる。
でもなー……。
心の中でオレは、前途多難そうな行く先に想いを馳せて、でっかい溜め息をついた。

-弐へ続く-

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・平助編

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となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
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※現在、WEB拍手は3作品です。
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本編番外編

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前編後編

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◆祈り結く声(平千)
前編後編

◆目覚めた想い(平千)
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