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2015/08/31

ジレンマ斎藤編・陸 - Please tell it only to me -

幕末設定。斎千。恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。


 副長から助言を頂いたにも関わらず、結局何も出来ないまま二日目の朝を迎えてしまった。
夜の巡察や隊務での外出が重なった故での事なのだが、理由は他にもある。副長の部屋で顔を合わせて以来、俺は千鶴からあからさまに避けられているのだ。
千鶴は、隠し事や謀が出来る質ではない。周りの皆も、千鶴の俺への態度を奇妙に感じたらしく、皆から口々に「何かあったのか」と問い質される始末だ。
確固たる原因が分からぬ為、「なるべく早く収束させる」と返したが……こうも避けられては、さすがに気持ちが沈んでくる。
 …やはり、好いた者同士だと思っていたのは俺の単なる自惚れだったのかもしれない。
不安に脅かされ、後ろ向きな思考ばかりが思い浮かんでしまう。恋情でこんなにも弱くなる己が情けなく思えてきた。
実のところ千鶴は、俺を迷惑に思っていたのではないだろうか……?
腰かけていた縁側から立ち上がり、澄み切った冬の青空を暫しの間眺めてから、地面に向かって小さくため息をついた時だった。

「あのっ…斎藤さんっ!」
背後から呼びかけられ、ぐるりと即座に振り向くと。
中庭の茂みの横に、頬を赤く染め、困ったような恥ずかしそうな顔をした千鶴が立っていた。
「…如何した。」
俺の言葉に、千鶴がびくりと肩を震わせる。今まで避けられていた所為で、反射的に物言いが冷たくなってしまったようだ。千鶴は眉を八の字に下げて俯いた後、再び俺へと顔を向けた。
「あの…頼まれていた、羽織の綻びを直しておきました。お洗濯も済んでおりますので、すぐに着られるようになってます。」
千鶴は、抱えていた黒い生地の布を俺に差し出してきた。受け取って確かめてみると、確かに俺の羽織だ。数日前に袖をひっかけてしまい、千鶴に頼んでおいたものだった。
「…すまぬな。」
「…いえ。」
気まずい沈黙が流れる。千鶴は手前で自分の両手を固く組みながら、何か言葉を捜すように視線を彷徨わせている。何か、言いたい事でもあるのだろうか。

 「…守りたいものを、間違えるなよ。」

ふいに、二日前に副長に助言された言葉を思い出した。
 …そうだ。俺は、千鶴を守りたい。
千鶴が、誰をどのように想っていたとしても…俺は―――。

「ちづ―――」
「…ごめんなさいっ!」
意を決して口を開きかけた瞬間、目の前の千鶴がぺこりと頭を下げてきた。
千鶴に謝罪された事に俺が呆然としていると、千鶴がゆっくりと顔を上げた。白い肌が、朱に染まっている。大きな瞳は何故か涙で潤んでいた。
「…何故、俺に謝る。俺は、お前から謝られるような事をされた覚えはないが。」
正直な感想だった。
避けていた事についての謝罪なのだろうか。いや、千鶴は理由もなくそのような事をする女子ではない。必ず理由がある筈だ。千鶴が俺を避ける理由となると…気づかぬうちに、俺が千鶴を傷つけていたのだろうか?
「あ、あの……数日の間、逃げるような事をしていて…すみませんでした。あの、斎藤さんに合わせる顔が、なくて……。」
千鶴はますます顔を赤らめ、たどたどしい物言いで言葉を紡いでいく。
合わせる顔がない…とは、どういう事だろうか。つまり千鶴は、俺に対して後ろめたい気持ちがある…という事になる。素直で正直者の千鶴が、後ろめたいと思う理由。心当たりがあるとすれば―――。

 「本当に、斎藤さんには黙っておいて戴けますか」

千鶴が、必死の様相で副長に懇願していた時の事を思い出した。
 …やはり、あの事なのだろうか。
「その事についてなら、もう良い。」
俺が軽くため息をついてそう告げると、千鶴は大きな瞳を更に大きく見開いたまま、時が止まったかのように表情を固まらせた。
「お前が隠したい事を、無理に知りたいとは思わん。だから―――」
「よくありません!」
聞いた事もないような強い口調で、千鶴は俺の言葉を遮った。
怒りからなのか、悔しさからなのか…形の良い眉はきっと釣りあがり、唇は小さく震えている。涙を堪えた千鶴の大きな瞳には、動揺の色が隠せない俺の姿が映っていた。
「確かに私は、隠し事をしていました。でもそれは、自分のした事が……あまりにも恥ずかしかったからです。でも、だからといって、それを隠す為に斎藤さんを傷つけるのは嫌なんです。だから…「もう良い」なんて、言わないで下さい。」
最後のあたりは、涙で掠れかけていた。千鶴は、大きな瞳から零れ落ちる涙を自分の両手でごしごしと擦るように拭き取る。俺は千鶴に音もなく近寄ると、両手を取った。
「あまり強く擦るな。目を傷めてしまう。」
「斎藤さん…。」
「…俺も、少し意固地になっていたようだ。聞かせてもらっても良いか。」
千鶴は眉を八の字に曲げて瞳を潤ませると、儚げに微笑んで「はい」と頷いた。


「―――と、いう訳なんです……。」
千鶴は林檎のように顔を真っ赤にさせた後、小さな肩を竦めて俯いた。俺は言葉をなくしたまま、目の前にいる千鶴の姿を見るのが精一杯だった。
 隠し事の内容は、二日前の出来事だった。
千鶴は、自室で俺の羽織を直していたそうだ。作業を終えた千鶴は、綻びを直した俺の羽織に袖を通し、鏡を見て己の姿を眺めていたのだという。それを副長に見られたというものだった。
「斎藤さんが、いつも着ていらっしゃるものだと思ったら、つい…あの、着てみたく…なってしまって……あ!でもっ、あのっ…ちゃんと、お洗濯はしておきましたから!ですから、その羽織をお返しするのも遅くなってしまって……。本当は、早くお話する筈だったんですけど…私が一度袖を通してしまったので、そのままお返しする訳にもいかなくて……。」
顔を俯かせながら、千鶴はしどろもどろになりながらも説明を続けている。
千鶴は、何も思っていない男の羽織に袖を通して着るなどという、無遠慮な女子ではない。それでも、「俺の羽織だから着てみたかったのだ」という。俺が、普段着ている物だから…と。それは、つまり―――。
「あの…さ、斎藤さん……?」
黙り込んでいた俺の態度を不安に思ったのか、千鶴は俺の顔色を伺おうと顔を上げようとする。
「…すまん。」
「え?」
小さく謝罪し、俺は千鶴の肩を引き寄せて強引に抱き寄せた。
左腕で千鶴の小さな身体を拘束し、右手で千鶴の後頭部を取って抱きしめる。千鶴が、こちらに顔を向けないようにする為だ。
「さ、斎藤さんっ…?」
震える声で、千鶴が声をかけてくる。顔は先程よりももっと赤くなっている事だろう。
「…すまぬ。もう少し―――このままでいさせてくれ。」
着物越しではあるが密着している為、千鶴の心の臓が大きく早く高鳴っているのが分かった。躊躇いながらも「諾」の意を込めた頷きで、結い上げられた千鶴の髪が小さく揺れる。その瞬間、微かに花のような香りがした。

「…あの、斎藤さん?」
「…何だ。」
俺の腕の中から解放された千鶴は、予想した通り真っ赤な顔をしている。上目遣いのまま声をかけてきた千鶴に、俺は言葉少なに返事をした。
「お顔が、少し赤いような気が―――」
「気のせいだ。…それより、千鶴。俺はまだ、お前から話してもらっていない事項があるのだが。聞かせてもらってもいいか?」
俺は千鶴の言葉を遮って問いかけた。千鶴はきょとんとした顔で小首を傾げた後、「はい」とふわりと微笑んだ。
「―――では、聞かせてもらうとしよう。「俺の何処を好いてくれているのか」を、な。」
「!」
千鶴の顔が、再び林檎のように赤く染まる。ぱちぱちと忙しく瞬きを繰り返す大きな瞳には、恥ずかしさで微かに涙が滲んでいた。だが、俺は拒む事を許すつもりなどない。
「先程、「隠し事で俺を傷つけない」と…そう言ったのだからな。きちんと、答えてくれるのだろう?」
朱に染まった柔らかな頬にそっと手を添えると、千鶴がびくりと肩を強張らせて俺を見つめ返してくる。
その大きな瞳の中には、幸せそうに微笑む俺の顔が映し出されていた―――。


-了-

――― あとがき ―――
このお話は、「千鶴の気持ちと自分の気持ちに揺れる斎藤さん」です。

二人の仲は幹部連中の中では「周知の事実」です。仲良しさんの二人を引っ掻き回してもらうため、沖田さんに一役かってもらいました。ちなみに、この沖田さんは特に横恋慕はしておりません。ただ単に「楽しそうだから」です(酷い)。

お仕事と千鶴に思い悩んだり、副長との悋気にやきもちしたりと、 恋する気持ちは、人を弱くも強くもさせるので、超思い悩んで揺らめいている一さんになりました。

結局、仲直りのきっかけは千鶴から作ってもらいました。
思い切りの良さを比べると、やはり一さんよりも千鶴の方が動くかなぁと思ったからです。元凶も千鶴ですしね。
彼女の隠し事だったのですが、特に進展もなく思いを通わせあっただけの二人なら、これ位の些細な事でもわりと大事なんじゃないかなぁと思って決めました。
サブタイトルは、「頼む、俺だけに教えてくれ」という意訳です。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・斎藤編

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プロフィール

となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
Pixiv: 4211441


※現在、WEB拍手は3作品です。
龍鈴(薄桜鬼)/原千(薄桜鬼)/
薬研&光忠(刀剣乱舞)

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