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2015/08/31

ジレンマ斎藤編・伍 - Please tell it only to me -

幕末設定。斎千。恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。


 副長は暫しの間黙りこんだ後、怪訝そうな顔で眉根を寄せながら、小さく溜め息をついた。
「俺には、お前が「今にも聞きたくて仕方がねぇ」って面をしてるように見えるがな。」
「!」
俺は、思わずぐっと息を詰まらせた。
副長が仰る通り…確かに、話を聞いてみたいとは思う。話の内容を耳にすれば、胸の辺りでもやもやとするこの心持ちも、それなりに収まりもするだろう。だが―――。
「…ご推察の通り、確かに俺はあの場でのやり取りを目にしました。故に、話して下さらなくて構わない…と言ったまでの事です。」
「―――お前がそんな面をして断るからには、訳があるんだろ。…聞かせて貰っても良いか。」
 やはり、言わねばならないのか。
副長の御厚意を無下にする事は心苦しいものでしかないのだが、やはり俺にはこの選択しか思い浮かばなかった。
「…あの時副長は、「俺には黙っておいて欲しい」という千鶴の願いを聞き入れました。いくらこの場に千鶴がいないからと言って、約束を違えるのは……如何な物かと存じます。」
副長が眉根を寄せたまま腕を組み直して黙っているのを機に、俺は更に言葉を続けた。
「更に副長は、千鶴に「武士に二言はない」と仰られました。そのように約束されたのであれば尚の事…如何に小さき約束であれど、人として…武士として、守るべきだと俺は思います。」
「…なるほどな。」
副長が、納得したという瞳で俺を見据えた時―――外の廊下で、とてとて、と小さな足音が近付いてくるのが分かった。十中八九、千鶴だろう。先程頼んだ、副長の茶を持ってきたのだ。
俺はすう、と小さく息を吸い込む。
「千鶴とて、俺に知られたくない話だからこそ、副長にあのような様相で口止めをした筈です。俺は、当人が必死で隠しておきたい事を…了承もなく、無理に聞こうとは思いません。」
戸の外で、小さく息を飲む気配がした。
 …安心しろ。
俺は、お前が誰にどのような想いを抱いていようと、傷つけるつもりなどない。
「守る」と、決めたのだから。
きっかけは何であろうと、俺が己自身の意思で「千鶴を守る」という命に従うと、決めたのだから―――。

「…お前の言い分は、分かった。俺の武士としての面目についての気遣いにも礼を言う。あの話は、俺の胸の中にしまっといてやるよ。誰にも言わねぇ。…たとえ、近藤さんに聞かれてもな。勿論、お前にも…だ。」
先ほどまで厳しく鋭かった副長の瞳が、緩やかなものに変わる。凛とした空気は変わらぬまま口の端のみで微笑んだその姿は、誰もが魅了されるのではないかと思えた。
「お心遣い、ありがとうございます。場も弁えず…失礼な物言いをしてしまい、申し訳ございません。」
「別に気にしちゃいねぇよ。それから―――おい!雪村!」
急に声をかけられた事に驚いたのか、千鶴の小さな悲鳴と遠慮がちな返事が聞こえた。
まさか、気づかれていないとでも思っていたのだろうか。並の者より気配に聡い副長や幹部である俺に分からぬ筈がないのだが…千鶴は、そのような考えは及ばないのかもしれない。
「お前はいつまでそこに、馬鹿みてぇに突っ立ってるつもりだ。茶が冷める前に、とっとと入ってこい。」
ぶっきらぼうな副長の物言いに、千鶴は己を落ち着かせるためか一呼吸おいてから「失礼します」と声をかけ、戸を開けて一礼をした。
「おう。すまねぇな。」
副長の労いの言葉に「いえ」と小さく返事をしながら、茶托に茶を乗せた。俺とは、一瞬たりとも目を合わせようとしない。おそらく、先ほどの事で気まずさを感じるが故の事だろう。
「…斎藤。さっきの話だがな。一つ、忠告しといてやる。」
 忠告?
俺が副長の言葉を心の中で繰り返しながら、居住まいを正して背筋を伸ばすと、副長は静かに口を開いた。
「…守りたいものを、間違えるなよ。」
 守りたい、もの?
「一番大事なところで、選びとるものを見誤ったりしねぇようにしろ。てめぇ自身で本当に守りたいものと、てめぇの意地とか面子なんてつまらねぇものを秤にかける程、馬鹿げた行いはねぇからな。守りたいものの為なら、てめぇの言い分なんて無視する事も、時には必要だ。…これは、男も女も関係ねぇ。誰にだって、守りたいものの一つや二つ…あるだろうからな。」
副長は、紫の瞳を細めて優しい眼差しで微笑んだ。
 一番大事な…守りたい、もの―――。
「…いいか。大事なものを選ばなきゃいけねぇ時、それを間違えるなよ。」
「―――肝に、命じます。」
俺がお辞儀をした瞬間、千鶴が「失礼致しました」と小さく礼をして退室していった。表情は分からなかったが、千鶴の声が何かに囚われたような…少し空虚なものに聞こえた気がした。
 千鶴…?
千鶴が出て行った戸を視線のみで眺めていると、少し苛立った声で再び副長に呼ばれた。
「…何呆けてやがんだよ。俺の話は仕舞いだ。とっとと出てって、てめぇがやらなくちゃいけねぇ事をしに行きやがれ。」
ぞんざいな物言いにも関わらず、何故か副長の言葉はあたたかみを帯びていた。

 早く、仲直りしに行ってこい。

俺にはそのように聞こえた。
「失礼致しました」と一礼を済ませて俺が副長の部屋から退室すると、頭上の空は美しい群青色から黒い闇色に染まり始めていた。
首に巻いている襟巻きが、俺を急くように木枯らしに吹かれてふわりと揺れた―――。


―陸話へ続く―

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・斎藤編

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薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
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Twitter: @to7mikaya_3na10
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※現在、WEB拍手は3作品です。
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