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2015/08/31

ジレンマ斎藤編・肆- Please tell it only to me -

幕末設定。斎千。恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。


「―――島田君からの報告は、以上です。」
俺が報告を終えると、副長は眉根を寄せたままこくりと小さく頷いた。
「なるほどな…報告は分かった。監察方には、引き続き調査してもらう事にする。斎藤も、ご苦労だったな。」
副長は何かを思案しているらしく、腕を組み、何処か遠くを見るような視線を流しながら労いの言葉をかけてくれた。
「いえ…報告事項は以上です。それでは、失礼します。」
副長の邪魔はすまい…そう思い、俺が挨拶を済ませて腰を浮かせた瞬間。
「…待て。」
語気を強めた、低めの鋭い声。呼び止められた声に驚いて顔を向けると、緊迫めいた顔の副長がじっと俺を見ていた。
「…ちょっと話がある。良いか?」
言葉を選ぶような副長の慎重な物言いにただならぬものを感じ、俺は「はい」と座り直しながら返事をした。
副長は俺が居住まいを正し終えるのを確認すると、気を落ち着かせる為か小さく深呼吸をした。蝋燭の灯りが、隙間風に吹かれて炎を小さく揺らめかせている。まるで、この先の話の内容に不安を感じている俺の心持ちのように思えた。
「隠さずに答えてくれ。…さっき、見ていただろう。」
 !
察するに、先程の千鶴とのやり取りの事だろう。
粗野な物言いをしながらも、内面はひどく優しい方だ…俺の事を慮ばかって下さっている事は、容易に推察出来た。
 しかし、どのような返答が良いのだろうか。
無論、嘘を吐く必要などはない。だが、俺の不用意な言葉で折角のお心遣いを無駄にしてしまうのは、出来れば避けておきたいところだ。
「…つい、お声をかけるのが遅れました。申し訳ございません。」
「そうじゃあねぇよ。あいつが、お前に隠し事をしてるって話を……お前も聞いちまったんだろうって、聞いてんだ。」
副長の声は、普段とは違う優しげなものだったのにも関わらず。俺は、まるで己の心の内で引っ掛かっていた刺を不用意につつかれたかのような、苦いものに感じた。
俯き加減でいた顔をそっと上げると、副長は「図星か」と言わんばかりの笑顔を向けている。腕組みをして涼やかに笑うその姿は、錦絵から抜け出てきたかのような艶かしささえ感じる程の風体だった。

  「本当に、斎藤さんには黙っておいて戴けますか」
 ―――千鶴の、切羽詰まったあの声。

  「黙っててやるよ。お前が了承しねぇ限りはな」
 ―――副長の、慈しむかのような…微笑ましさが伺える笑み。

まるでじゃれあうような、二人のやり取り。
さっきの光景が脳裏に浮かび―――瞬時に、嫌だ、と思った。
花が綻ぶような千鶴の笑顔が、俺ではない他の男に向けられる姿など……見たくもない。出来る事なら、俺だけに見せてくれればいいとさえ思ってしまう。
だがそれは、俺の我が儘というものだろう。
先日千鶴が逃げ出したのは、答えられなかったのはではなく…答える必要などなかったから、なのではないだろうか?
元より、己が好かれる自信などどこにもない。千鶴が俺を好いていてくれているというのも、実際は俺の願望から来る自惚れで、千鶴にとってはさほど大した事ではなのかもしれない―――。

「…い。おいっ、斎藤っ!」
副長の呼び掛けを機にはっと我に返ると、眉根に皺を寄せて憮然としている副長の顔がすぐそこにあった。
「…申し訳ございません。少々、考え事を……。」
「…ったく。じゃあ、さっきの話は聞いてなかったんだな?」
ため息混じりに零れる副長の言葉に、俺が「申し訳ございません。さっきの、とは…?」と問いかけると。
「決まってるじゃねぇか。あいつの隠している事の話だ。」
今、一番気になる話題が耳に飛び込んできた。
思わず目を瞠目してから副長を見ると、口の端のみを吊り上げたしたり顔で笑っている。目を逸らす事も否定する事も出来ぬまま、更には何も言葉が思い浮かばず、俺は黙り込む事しか出来なかった。
「さっきの考え事も、大方そんなところだろうが。仕方ねぇな…お前も聞きてぇだろうから、教えてやる。実は―――」
「…副長。」
秘密を暴露しようとした副長の言葉を、俺は静かに遮った。
「あぁ?」
喉がからからに乾いているのに、膝の上で握る拳の中はじっとりと汗ばんでいる。己の心の臓が、どくどくと動きを早めていた。生唾を飲み込むと、喉の奥でごくり、と低い音が鳴った。
「―――その話は、そのまま副長の胸の中にしまっておいて下さい。俺には…話して下さらなくて構いません。」
その瞬間。
副長は、配下の者には余り見せないであろう驚愕の表情で、俺の顔を見返した―――。

―伍話へ続く―

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・斎藤編

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