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2015/08/30

ただいま。- You're my home -

現代パロ。沖千。 恋人設定。共通テーマ「おかえりなさいシリーズ」。


 梅雨もすっかり明けて、ギラギラと容赦のない陽射しが身体を突き刺してくる、七月の末。
僕と千鶴は、今日のデートを終焉へと向かわせる電車の中にいた。
休日の夜だからか、車内はちょっとだけ混雑している。僕はドアの脇にある手摺と座席の角に千鶴を立たせて、手前の手摺を握りながら千鶴の前に立っていた。電車が揺れて体勢を崩した時、すぐに守る事が出来るからだ。
…まぁ、周りの男達への牽制と、千鶴を獣達の視線から守る為でもあるんだけど。
窓の外では、真っ暗闇の中を小さくきらめく電灯が短い光の線を作って、窓枠から次々とフレームアウトしていく。 それはまるで、昼間プラネタリウムで見た流星群みたいに見えた。

 電車からホームに降りて、川の濁流のような人混みに流されながらも僕達は改札へと歩いていく。はぐれないようにと僕が千鶴の小さな手を取ると、千鶴は頬をほんのりと赤らめて嬉しそうに微笑んだ。
改札口から少し開けている駅前に出ると、広場は人待ち顔で辺りを見渡す人や、解散する前に談笑する団体でごった返している。
僕は、いつも通り千鶴を自宅へと送り届ける為に、千鶴を引き連れてゆっくりとした足取りでバスターミナルへと足を向けた。
「総司さん、今日はありがとうございました。プラネタリウムなんて、小さい頃に行ったきりでしたから、すごく楽しかったです。」
僕の隣でちょこちょこと小さな歩幅で歩いている千鶴が、くるりと僕の方へ顔を向けてにこりと微笑んだ。
「どういたしまして。それより千鶴、足の具合はどう?靴擦れ、大丈夫?」
「あ…ちょっとだけ痛みますけど、でも…大丈夫です!水脹れの部分には、ちゃんとカットバンも貼ってますし。いつもよりヒールが高いサンダルで、下ろし立てで履き慣れていない所為ですから。大した事ないですよ。」
千鶴はその場で数回軽く足踏みをすると、何でもないという顔で軽く笑った。
 …嘘つき。
僕に心配をかけないように、気遣ってくれてるのは分かるんだけどさ。
そんなペンギンみたいな歩き方をしている癖に、大した事ない訳ないじゃない。
僕は心の中で、目の前の恋人に少しだけ呆れた。
 千鶴の両足には、何枚ものカットバンがあちこちに貼られている。元々色白の所為か、サンダルで締め付けられて痣のようになっている赤い痕が痛々しい。どう見ても、負担がかかっている状態なのは、もう明らかだった。
「今日は行き先が街中だったし、駐車場を探すのが大変だから電車にしたんだけど…やっぱり車の方が良かったね。いろんな場所に行ったから、かなり歩き回らせちゃったし。本当に、ごめんね。」
千鶴の足を眺めながら僕が謝ると、千鶴は困ったように眉を下げてから首を横に振って「新しい靴を履き始めた時はいつもこうですから、気にしないで下さい」と、慰めるような口調で僕に言った。
「でもこれ、かなり痛いでしょ?」
「…」
僕の問いかけに、千鶴は黙り込んだまま大きな瞳を少しだけ伏せた。
「…やっぱり。」
僕がため息をつきながら呆れたように独りごちると、小さな声で「ごめんなさい」と謝られた。謝る必要なんて、別にないのに。
「何で謝るのさ。千鶴は別に悪くなんてないでしょ?大丈夫だよ、別に怒ってなんかいないし。ね?」
「…はい。」
千鶴は上目遣いで僕を見上げると、安堵したのか柔らかい笑顔でにこりと笑った。

 ―――さて、問題はここからだ。
少し引き摺るような今の千鶴の足取りを見ると、足の具合はあまり良いようにはとても見えない。
千鶴の家はここから二十分程バスに揺られて、更に停留所から自宅まで十分歩く距離だ。
今の周りの混雑具合を見ても、千鶴がバスの座席に座れる可能性は低いだろう。下手をすると、バスが揺れた瞬間誰かに足を踏まれて、更に悪化させてしまうかもしれない。
僕は別に家までタクシーで送ってあげても良いけど、千鶴が「物凄くお金がかかるから駄目です!」とか何とか言って強固に断られそうだし。
千鶴のお父さんは、今日学会に出席していて留守だし。薫の奴は、今の時間だと家庭教師のアルバイト中。超シスコンで僕達の間を色々邪魔してくる癖に、肝心な時は使えないなんて。まったく酷い兄貴だよね。
 …そうだ!
足の痛みに眉を顰めながらも申し訳なさそうに項垂れている千鶴に、僕はにっこりと笑いかけると。

「今日は、君を家まで送らない事にするよ。」

と言った。
「え…」
千鶴は、僕の言葉をしっかりと誤解したらしい。悲しそうな驚いたような顔をして、僕を無言でじっと見つめ返してくる。
 あぁもう…予想通り、泣きそうな顔しちゃって。
うるうる瞳の泣きそうな顔が可愛いのって、ちょっと反則じゃない?
僕が、その顔見たさについつい千鶴を苛めちゃうのも、仕方ないよね。
「…何て顔してるのさ。君をほったらかしにするなんて、僕は一言も言ってないよ?」
「え?」
涙で滲んだ瞳でパチパチと瞬きをする千鶴に、僕は小さく笑ってそっと耳打ちした。

「僕の部屋に、一緒に帰ろう。」

「…へっ?」
「今日は土曜日だから、明日はお休みだよね。さっき「今週はアルバイトもない」って言ってたから、別に問題ないでしょ?」
千鶴は表情を固まらせたまま僕の話を聞いていたかと思うと、湯気が出そうな位に顔を瞬時に真っ赤にさせた。微かにぱくぱくと動く唇は、上手く言葉を繋げる事が出来ずに「でも、あの」と小さな言葉を繰り返すだけだ。
 もう数える事すら面倒になる位、千鶴は僕の部屋で夜を明かした事があるのに。それでも、いつもこんな風に恥ずかしそうに顔を赤らめては動揺しちゃうんだから。
 こんな風に照れるのも可愛いけど…そろそろ、慣れてくれても良いと思うんだけどなぁ。
僕は、ぷっと噴き出すように笑うと、千鶴の小さな頭を撫でながら口を開いた。
「このサンダル。さっき、下ろしたてだって言ったよね。それって、僕と会う為にわざわざお洒落してきてくれたって事でしょ?それで出来た傷なら、介抱するのは僕の役目だと思うんだけど。」
「で、でも…」
「…それにね。」
僕は短く言葉を切ると、さっきからずっと繋いでいた手をぎゅっと強く握った。吸い付くように触り心地の良い千鶴の手は、もう少し力を入れたら簡単に折れてしまいそうな位に華奢だった。

「…今日は、ずっと―――君と…離れていたくないんだ。」

するりと出た僕からの素直な言葉に、千鶴は更に顔を赤く染めた。
目の前にある紅梅みたいに赤く染まった千鶴の小さな耳に、かぷりと噛みつきたくなる衝動を僕は必死で抑える。
 ねぇ…「うん」って、言ってよ。
君の口から、「一緒に帰る」って…ちゃんと言って欲しいんだ。
ちょっかいをかけるのを我慢していた所為か、返事に痺れを切らして「駄目?」と問いかけた僕の声音は、思ったよりも低いものに聞こえた。
千鶴はふるふると小さく首を横に振ると、赤い顔を俯かせたまま「お、お邪魔します」と呟いた。
 ―――どうして、そこでその言葉が出てくるかな。
遠慮深いのは千鶴の良いところだけど、今は遠慮するところじゃないと思うんだけど。
「…駄目。」
「えっ!?」
「さっき僕、言ったよね。「僕の部屋に帰ろう」って。言うセリフ、違うでしょ?」
不満げな僕の言葉に、千鶴は微かに眉を下げると。
「…じゃあ、総司さんと一緒に帰ります。」
と、照れ臭そうに笑った。
「うん。じゃあ、タクシーで帰ろうね。ここから近いから、一メーターで着いちゃうし。」
「えぇっ!?大丈夫ですよ、総司さんの部屋まで歩いて―――」
「駄目。千鶴がこれ以上歩き回るのは、僕が許さないから。」
僕は有無を言わさずタクシー乗り場へと千鶴を引き摺っていくと、上機嫌でタクシーに乗り込んだ。

だって…僕の帰る場所が君であるように、君の帰る場所が僕であって欲しいから。
家についたら、言ってあげるよ。

「ただいま。…おかえり。」

…ってね。
いつか僕達が、この挨拶を自然に言い合える日が来るように。
何度も何度も、ね。


-了-

――― あとがき ―――
このお話は「主人公に千鶴ちゃんが[おかえりなさい]と言ってくれる」というシチュをテーマに、作った作品です。
「自分のテリトリーを大事にする猫気質の沖田さんの事を考えて、千鶴ちゃんが家主のいない部屋に入り込むかなぁ?」とふと疑問に思ったので、ボツにしました。
「僕の部屋においでよ」と誘う方が、沖田さんらしいかな、と。
甘々なお話にしたかったので、「困っている千鶴ちゃんを、揶揄いながらもすごく大事にする沖田さん」という方向へ軌道修正し、あのようなお話になりました。
靴擦れのエピソードですが、これは以前私がやってしまった出来事を基にしております;

タイトルの「ただいま。」ですが、「千鶴ちゃんと一緒に帰るから[ただいま]かな?」と思ってこのタイトルにしました。
サブタイトルの「You're my home」ですが、「いつか同じ場所へ帰る日を願う」という意味と、「住む家がどんな場所になろうと、沖田さんの心が帰るのは千鶴ちゃん」なので、「君が僕の帰る場所」という意味を込めています。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : おかえりなさい

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プロフィール

となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
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※現在、WEB拍手は3作品です。
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