FC2ブログ

--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2015/08/30

ジレンマ沖田編・参 - feel irritated -

幕末設定。沖千。 恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。



「山南さん、おはようございます。」
「おはようございます。沖田君も。雪村君、さっき黒地の糸がないか探し回っていたでしょう。よかったら、これを使って下さい。」
「わぁ、ありがとうございます!糸を切らしてしまっていて、困ってたんです。」
山南さんから黒の糸巻きを一つ二つ手渡されて、千鶴ちゃんはほっと安心したように笑った。また誰かから、針仕事でも頼まれているんだろう。本当にお人好しだ。
「いえ。私は、土方君からそれを預かっただけですよ。…そういえば彼が、君の事を呼んでいましたが。仕事の手伝いですか?」
山南さんは眼鏡の位置を直すと、ふんわりと微笑みながら問いかけた。羅刹の身となっても、この人の優雅な所作は変わらない。
「えっ…あ、はい。そ、そうです。」
何故か目線をきょろきょろと泳がせながら、千鶴ちゃんは曖昧に頷いた。
「…そうですか。では、早く行ってあげて下さい。土方君は君達とは違って、とても忙しい身なのですからね。」
山南さんは微笑みながら冷たい言葉で僕達をちくりと刺すと、ゆるやかな足取りで去っていった。

「…あの、沖田さん?」
千鶴ちゃんは、上目遣いで僕に声をかけてきた。
「何?」
「あ、あの…手を離して下さらないと、困るんですが……。」
山南さんがくるりと踵を返してから立ち去る今まで、僕は糸を抱えていない千鶴ちゃんの手をぎゅっと握っていた。勿論、離すつもりは毛頭ない。
折角ゆっくり出来ると思ったのに、何でよりによってあの鬼副長のところなんかに行かせなくちゃいけないのさ。
「やだ。だって君、離したら土方さんの部屋に行くでしょう?また僕の事を放って。」
「で、でもそれは…!ちゃんと、お仕事があるからで……!」
「土方さんなら、別に一人で大丈夫だよ。君がいなかった時だって、ちゃんとやってたんだから。」
そもそも土方さんの小姓なんて、平隊士避けの為の名目上の事だし。本当に小姓のような事をする必要なんかない。
土方さんの為にお茶を出したり、書類整理の手伝いをしたり。僕が独占出来ないのに、土方さんは「小姓」という建前を良い事に、この子をずっと独占出来るんだ。…だんだん腹が立ってきた。
「確かに土方さんはお仕事がとても出来る方ですし、そうなのかもしれませんけど……!でも、私にはやらなくちゃいけない事が…!」
千鶴ちゃんは困り果てた顔で、僕を諭そうと必死で言葉を紡いでいる。
 ―――おかしい。
いつもの千鶴ちゃんなら、「じゃあ後で時間を作りますから」とか言って、僕の機嫌を宥めるように妥協案を出してくるのに。それさえも言ってこない。
「…何で?」
「え?」
急に低くなった僕の声音に、千鶴ちゃんはびくりと肩を縮めた。
「何でそんなに、土方さんのところへ行きたがるの?」
「で、ですから!お仕事があるんですっ…!」
千鶴ちゃんは僕の態度におろおろしながも、やはり頑なな態度を崩さない。やっぱり変だ。
「…ふぅん。そんなに千鶴ちゃんは、土方さんの傍にいたいんだ?恋人の僕の傍よりも。」
「そ、そんなんじゃありません……!」
「じゃあ何なの。」
苛々が抑えきれなくて、言葉に刺々しさを隠す事が出来ない。
何で、僕よりも土方さんなんかを選ぶのさ。この前だって、僕の事を好きだって言ってくれたのに(恥ずかしがる千鶴ちゃんを、僕が半分無理に言わせたんだけど)。
大体、千鶴ちゃんは狡いよね。いつも僕が促さないと、肝心なところは言ってくれないし。
恥ずかしがる姿も確かに可愛いけど、もう少し自分から言葉にしてくれたっていいと思うんだけど。
ついさっきだって―――。
「…」
千鶴ちゃんは僕から視線を外すと、目を伏せて俯いた。必死で涙を堪えているらしく、小さくて丸い肩が震えている。
 しまった…やりすぎた。
どうも、駆け引きの調整を上手く取る事が出来ない。これも、会えなかった日が長かったせいなのかもしれないと、僕は心の中で勝手に判断した。
「…あぁ、もう良いよ。お仕事だか何だか知らないけど、行ってきたら?僕は部屋で、一人寂しく…」

ばしっ!!

僕が言い終わらないうちに、僕の身体に黒い糸巻きが投げつけられた。勿論投げたのは―――。
「…千鶴ちゃん?」
「わっ…私だって、頑張ってみたいんですっ!図々しいって、お節介だって分かってますけどっ…こんな私でも、何か出来る事がないかなって、そう思って……!!」
いつのまにか立ち上がっていた千鶴ちゃんは、大粒の涙を溢していた。俯いて僕を見つめているせいで、ぽとりぽとりと涙の粒が廊下に零れていく。
「ち…」
「そっ…総司さんの馬鹿っ!!もう知りませんっ!!」
千鶴ちゃんはものすごい速さで糸巻きを僕から取り上げると、泣きながら走り去っていった。

初めて、自分から僕の名前を呼んでくれたのに。
「馬鹿…か。何も、余計な言葉を付けなくても良いじゃない。」
廊下の柱に身体を預けるように寄りかかって、僕は深い溜め息をついた。
 …あぁもう。何で僕は、あの子にだけ上手く出来ないのかな?
―――考えを張り巡らせたけれど、その問いの答えは見つからなかった。


-肆話へ続く-

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・沖田編

<< ジレンマ沖田編・肆 - feel irritated - ジレンマ沖田編・弐 - feel irritated - >>

コメント

コメントの投稿

URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 

 BLOG TOP 

プロフィール

となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
Pixiv: 4211441


※現在、WEB拍手は3作品です。
龍鈴(薄桜鬼)/原千(薄桜鬼)/
薬研&光忠(刀剣乱舞)

カテゴリー

シリーズ(完結済)

薄桜鬼。2話~の作品。完結済。
◆ジレンマシリーズ
沖田編 1234
斎藤編 123456
平助編 1234
原田編 123
土方編 123456

◆対決シリーズ
沖田VS平助 沖田編平助編
原田VS土方 原田編土方編

◆片思い対決(色)
沖田VS斎藤 沖田編斎藤編

◆SSV(バレンタイン)
沖田編
斎藤編後日談
平助編後日談後日談2
原田編
土方編
山崎編(移行中)

◆雨上がりの行方(沖千斎)
沖田編斎藤編

◆翻弄しないでくれる?(沖千)
本編番外編

◆幸福を得た獣(土千)
本編番外編

◆果てなき心(原千)
前編後編

◆笑顔に会いたい(平千)
前編後編

◆祈り結く声(平千)
前編後編

◆目覚めた想い(平千)
1234

メールフォーム


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。