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2015/08/30

ジレンマ沖田編・弐 - feel irritated -

幕末設定。沖千。 恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。




 あれから数刻経って、日が落ち始めた夕暮れ時。
「―――うん、これでいいかな。」
僕は手入れの終わった刀身の具合を見て頷くと、刀を鞘に納めて枕元にある黒塗りの刀掛台にそっと置いた。
朝から敷きっ放しの布団の上に仰向けに倒れると、ふう、と一息つく。
別に具合が悪い訳でもなければ、疲れている訳でもない。この布団は、あの過保護な鬼副長が抜き打ちで部屋にやって来た時の為の、言わば保険のようなものだ。
少しは休んでいる振りでもしておかないと、世話焼きな鬼副長さんは口喧しく説教を始めかねない。そんな面倒事はごめんだ。

「…千鶴ちゃん、どうしてるかな。」
ふと、あの子の顔が浮かんだ。
仕事の時は勿論、剣術に関した事を考えている時は、頭の片隅にも上らないのに。いつからか、こうしてぼんやりしていると、決まってあの子の事を思い出すようになっていた。
「…重症だよね。」
ごろりと寝返りをうつのと同時に、自嘲めいた言葉が零れた。
ある意味、胸に巣食っている死病よりも厄介な代物かもね―――。
僕が胸元に手を当てて、くす、と笑った時だった。

部屋の外の廊下から、ぱたぱたと急ぐ軽い足音が遠くから聞こえてきた。
聞き覚えのある足音に僕はがばっと起き上がると、寝転がったまま這っていって、障子の戸をすらっと開けた。
「ひゃっ…!お、沖田さん!」
自分の真横にあった戸が急に開いた事に驚いて、足音の持ち主はぴょん、と後ろに飛び退いた。
「僕に黙って、どこに行くの?千鶴ちゃん。」
畳に頬杖をつきながら、僕はにっこり笑って千鶴ちゃんを見上げた。
千鶴ちゃんは「うっ」と口篭ると、僕から視線を外して気まずそうにきゅっと唇を引き結んでいる。
「…千鶴ちゃん?僕の質問に、答えられないの?」
わざと声を低くしながら、僕は身体を起こして畳に胡坐を掻いた。それでも目線は僕の方がずっと低いのに、千鶴ちゃんはまるで見下ろされたかのように縮こまっている。
「僕さ、すごく退屈なんだよね。最近、誰かさんが全然構ってくれなくなっちゃったからさ。」
千鶴ちゃんは、はっとした顔で僕の方を見た。自分のせいじゃないはずなのに、申し訳なさそうに眉を寄せてしゅんとしている。
「…もしかして僕、千鶴ちゃんに弄ばれちゃった?」
「ごっ…誤解されるような言い方をしないでくださいっ!」
千鶴ちゃんはその場に膝を折ると、正面から僕をきっと睨みつけた。
本人は怒っているつもりなんだろうけど、はっきり言って全然怖くない。上目遣いでほんのりと頬を赤く染めた顔は、拗ねたように見えてむしろ可愛い位だ。
「えぇ?だって千鶴ちゃん、恋人の僕を放っておいても全然平気そうなんだもん。僕、遊ばれちゃったのかと思ったよ。」
僕はふいっと顔を背けて、わざと大きくため息をついた。千鶴ちゃんは悲しそうに眉を歪ませると、ぶんぶんと首を横に振って、両手で僕の片手をぎゅっと握ってきた。
―――珍しい。
普段よりもちょっと積極的な恋人に、思わずどきりとした。千鶴ちゃんが自分から僕に触れてくるなんて、珍しい。
「そんな事、ある訳ないじゃないですか!だってっ……!」
はっと我に返った千鶴ちゃんは、またぐっと言葉を詰まらせる。
「うん。……何?」
僕はじっと千鶴ちゃんを見つめて、「続き」を促した。
千鶴ちゃんは真っ赤な顔で、恥ずかしそうに視線を泳がせながら言い澱んでいる。
何で、そこで止まっちゃうかな。ほら、早く続きを言ってよ。そこからが、重要なんだからさ。
「…千鶴ちゃん。」
僕が優しく名前を呼ぶと、千鶴ちゃんはびくりと少し肩を震わせた。
ごつごつした僕の手を握る小さな手は、少しだけ震えていて。ほんのりと赤かった顔は、耳まで真っ赤になっている。
 あぁ、可愛いなぁ。
沈んでいた気持ちがすうっと消えかけた、その時だった。
「雪村君。」
落ち着きのある凛とした声が、頭上から降ってきた。山南さんだった。夕暮れ時だから、羅刹の彼にとっては起床時間にあたる。起きたばかりのはずなのに、山南さんは相変わらず一分の隙もなかった。
「あ…、おはようございます、山南さん。」
千鶴ちゃんは、慌てて僕から手を離した。僕としては、そのままでも良かったのに。
 …また、か。
昏い気持ちが蘇ってくるのを、僕はどこか遠くで起きた事のように感じていた。

―参話へ続く―

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・沖田編

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薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
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