FC2ブログ

--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2015/08/30

ジレンマ沖田編・壱 - feel irritated -

幕末設定。沖千。 恋仲捏造設定。共通テーマ「ジレンマシリーズ」。


 ―――最近の僕は、ちょっとご機嫌斜めだ。
「ここにいたのか、雪村君。近藤局長がお呼びだ。申し訳ないが、今から俺と局長室まで共に行ってもらえないだろうか。」
やわらかな冬の陽射しが射す、昼間の縁側。僕達の周りをまとっていたのんびりした空気は、静かだけど強い意思のこもった山崎君の声で両断された。
「分かりました、山崎さん。…沖田さん、折角お声をかけて下さったのに、すみません……。」
千鶴ちゃんは山崎君に屈託なく返事をすると、僕に顔を向けて申し訳なさそうに頭を下げた。一休みしている千鶴ちゃんに声をかけて、僕が隣に腰掛けながら一言二言話していた矢先だったから、申し訳ないと感じたのだろう。
「近藤さんに呼ばれてるのなら、行かなくちゃね。良いよ、行っておいで。」
僕は千鶴ちゃんの後頭部に優しい声を降らせながらも、山崎君に視線を這わせて不快の念を表した。我ながら、器用な真似をしていると思う。
山崎君は僕の視線なんて意にも介さない様子で、ふいっと僕から視線を外すと。
「雪村君、悪いが少々急いでもらえないか。局長をお待たせするのは、俺としても心苦しい。」
感情を抑えたような静かな声で、髪や着物を整えている千鶴ちゃんを急かした。千鶴ちゃんは「すみません」と、慌てて廊下に上る。…撤回。山崎君は、十分意に介したみたいだ。

「それでは沖田さん、失礼しますね。」
「…では。」
少し早い足取りで、山崎君と千鶴ちゃんの姿が僕から遠のいていく。
廊下の角を曲がっていく時、僕の機嫌を心配したのか、千鶴ちゃんは僕のいる方向にちらりと視線を向けてきた。ずっと千鶴ちゃんの後ろ姿を見送っていた僕と、視線がぶつかる。大きな目を見開いて、千鶴ちゃんは恥ずかしそうにほんのりと顔を赤らめた。
「…またね、千鶴ちゃん。」
猫みたいに背中を丸めたまま、僕はひらひらと千鶴ちゃんに手を振った。
千鶴ちゃんは嬉しそうに顔を綻ばせると、ぺこりと僕にお辞儀をして山崎君の後を急ぎ足でついていった。
二人の気配が遠ざかって、完全に消える。縁側にいるのは僕だけだ。
「…また、か。」
僕は両足に肘をついて、溜め息と一緒に独りごちた。白い息と共に零れた声が、思ったよりも寂しそうに聞こえた気がして、少しだけ自分に驚いた。
千鶴ちゃんと一緒に過ごす時間が取れなくなって、もうどれ位経つだろう。
数日前から、僕と千鶴ちゃんはすれ違いの日々だ。時間が全然合わなくて、二人きりでゆっくりとした時間を取る事がまともに出来ていない。日中会えない事は何度かあったけれど、それは一日や二日位で、こんなに数日もの間続いた事はなかった。
一日。二日。試しに指折り数えてみると、折り込まれたのは片手の五本だった。
「…何だ、思ったより経ってないじゃない。」
たったの五日。それでも、そんなにあの子に会えない事が気に病む事なのかと、僕はくす、と自嘲気味に笑った。


 最近千鶴ちゃんは、忙しそうに屯所の中を飛び回っている。
炊事に洗濯、掃除などの当番の手伝いをしたり(隊士達の大雑把過ぎる所作に耐えかねて、「自分にも関わらせて欲しい」と土方さんに直談判したらしい)。
幹部達の着物の繕い物を引き受けたり(不逞浪士とのやり取りなどで、よく破れたり解れてたりするのを見かねたらしい)。
その他諸々の雑務を見つけては、積極的に自ら引き受けたりなんかしている。
確かに、千鶴ちゃんのおかげで毎日のご飯は美味しいし、洗濯も汚れものがなくなって綺麗になった。屯所内の埃っぽさも消えて、庭だって綺麗に整理されている。
千鶴ちゃんが、皆の役に立ちたくて頑張っているのは僕も分かっている。僕だって、「近藤さんの一番の役に立ちたい」―――そのために新選組で一番隊組長として頑張っているのだから、気持ちが分からない訳じゃない。
それに何より、千鶴ちゃんの有能ぶりはもう皆の知るところとなっているから、皆が自然と頼りにしてしまうのも仕方がないとは思う。
 ―――でもさ。いい加減、僕も限界なんだよね。
「物分りが良い人」の役って、正直つまんないし。何より……僕らしくないでしょ?
よっ、と声を上げて僕は腰を上げると、軽い足取りで縁側を後にした。


―弐話へ続く―

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : ジレンマ・沖田編

<< ジレンマ沖田編・弐 - feel irritated - SSV・沖田編- may be a day like this once in a while - >>

コメント

コメントの投稿

URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 

 BLOG TOP 

プロフィール

となみかや

となみかや/1073kaya Admin
薄桜鬼・うたプリ・刀剣乱舞に、
重篤レベルで嵌り中。
千鶴受/春歌受/女審神者受

Twitter: @to7mikaya_3na10
Pixiv: 4211441


※現在、WEB拍手は3作品です。
龍鈴(薄桜鬼)/原千(薄桜鬼)/
薬研&光忠(刀剣乱舞)

カテゴリー

シリーズ(完結済)

薄桜鬼。2話~の作品。完結済。
◆ジレンマシリーズ
沖田編 1234
斎藤編 123456
平助編 1234
原田編 123
土方編 123456

◆対決シリーズ
沖田VS平助 沖田編平助編
原田VS土方 原田編土方編

◆片思い対決(色)
沖田VS斎藤 沖田編斎藤編

◆SSV(バレンタイン)
沖田編
斎藤編後日談
平助編後日談後日談2
原田編
土方編
山崎編(移行中)

◆雨上がりの行方(沖千斎)
沖田編斎藤編

◆翻弄しないでくれる?(沖千)
本編番外編

◆幸福を得た獣(土千)
本編番外編

◆果てなき心(原千)
前編後編

◆笑顔に会いたい(平千)
前編後編

◆祈り結く声(平千)
前編後編

◆目覚めた想い(平千)
1234

メールフォーム


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。