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2015/08/30

SSV・沖田編- may be a day like this once in a while -

現代パロ。沖千。バレンタイン2011SSVシリーズ」。



今日は、世間でいうバレンタインデーって奴だ。残念ながら僕は、この日を一度も「楽しい」と感じた事はない。
だってさ?毎年毎年、全然知らない子や特に好きでもない子から行く先々で待ち伏せされて、特別欲しくもないプレゼントを勝手に押し付けに来られてみてよ。面倒臭くて仕方ないんだけど。
しかも、プレゼントを断ると勝手に「冷たい人」認定されるしさ。
知らない子から、何が入ってるのかもよく分からないプレゼントを押し付けられても、ちっとも嬉しくない。むしろ迷惑だし。
そんな日を楽しめっていう方が無理―――今までは、そう思ってたんだけど。


「ったく…あの鬼教頭、ひでぇよなー。今時、バレンタイン禁止令って…ふざけんなっつの。」
「ホントにな。あぁもーっ!ひょっとしたら、雪村さんからチョコが貰えたかもしんねぇのにさー。まぁあとは、バイト先の子達にでも期待するしかねぇかー。」
下駄箱へと向かう奴等のボヤキをすれ違いざまに盗み聞きしながら、僕は他の連中とは真逆の軽い足取りで夕暮れ時の廊下を歩く。向かう先は、一年生の教室が並ぶフロア。千鶴ちゃんのところだ。
全校生徒が参加する朝礼で突然発表された、バレンタイン禁止令と抜き打ちの実力テスト。
これの所為で、全校生徒のほぼ全員がショックを受けたに違いない。
うちの学校でたった一人しかいない女子生徒、千鶴ちゃんからバレンタインのチョコが貰えるかもしれない―――その期待を抱かなかった奴は、たぶんいないだろう。自由登校の筈の三年生が大勢登校してきた事を見ても、それは明らかだ。
千鶴ちゃんも、登校時に大きな紙袋を持ってきていたから、あの朝礼の所為で出鼻を挫かれてしまっただろう。

 ―――やっぱり、いた。
がらんとした教室をそっと覗くと、予想通り千鶴ちゃんは、自分の席に座ってしょんぼりと肩を落としていた。
机の上には青い大きな紙袋が乗せられていて、ひらひらしたラッピング用紙の先がひょっこりと顔を出している。おそらく剣道部の皆の分とか、先生方への分とか…もしかしたら、僕の分も入っているかもしれない。…一君や平助の分も入ってそうだけど。
「…千鶴ちゃん。」
ドアの横から、紙袋に向かって大きなため息をついた千鶴ちゃんにそっと声をかけると、彼女は小さな肩をびくりと揺らしてゆっくりとした動作で僕の方へ顔を向けた。大きな瞳は少し潤んでいて…たぶん泣いていたんだと思う。
「もう夕方だよ。帰らないの?」
「あ…いえ。ちょっと…帰る気になれなくて……。」
力なく笑う声は、少し涙を含んでいた。
おそらく、前夜まで一生懸命作っていた筈のバレンタインチョコ。それを、当日いきなり禁止されてしまったのだ。落ち込むなっていう方が、無理だよね。
まぁ…たぶん、土方先生あたりが千鶴ちゃんの身の安全を計るために禁止令を出したんだろうけど。
でもそれなら、もっと前に千鶴ちゃんにだけは予め伝えるとか、それなりの配慮はしておくべきだったんじゃないのかな。まぁどうせ土方さんの事だから、「生徒の一人を特別扱いはする訳にはいかねぇ」とか何とか考えたんだろうけど。
あの人のつまらない意地の所為で、千鶴ちゃんの折角の気持ちを徒労に終わらせるなんて……土方さんは、本当に酷いよね。
まったく…この子を泣かせたり、苛めたりして良いのは、僕だけなのにさ。
「…そっか。」
僕は俯いている千鶴ちゃんの頭をぽんぽん、と撫でると。千鶴ちゃんの席の前の椅子を引いて、座席の板を跨いで後ろ向きに座った。千鶴ちゃんの机を挟んで向かいに座った僕を、彼女は不思議そうな顔で見つめている。琥珀色をした大きな瞳の目尻には、まだ涙がうっすらと残っていた。
「じゃあ、君が家に帰る気になるまで、僕が一緒にいてあげる。もうすぐ暗くなるし、女の子の一人歩きは危ないからね。」
にっこり笑ってそう言うと、千鶴ちゃんは困ったような顔をしてふるふると首を横に振りながら「そんなの、先輩に悪いです」と予想通りの言葉を返してきた。
…やっぱり、そう来るよね。
僕が千鶴ちゃんの頬にそっと手を伸ばすと、いつもの柔らかい頬の感触には、少し湿った跡がまだ残っていた。
「…そうやって、一人で泣いていた事を隠すような女の子をそのまま見放せる程、僕は冷たくないつもりなんだけど。」
「な、泣いてなんか…。」
「そう?今日のバレンタイン禁止令の所為で、折角持ってきたチョコを皆に渡せなくて、台無しになっちゃったのが悲しかったんじゃないの?」
千鶴ちゃんはびくりと肩を強張らせると、困ったような泣きそうな顔をして僕から顔を背けて斜め下に俯いた。どうやら図星だったようだ。
僕が「当たり…なんでしょ?」と問いかけると、俯いている顔から、ぽと、ぽと、と小さな涙の粒が零れ落ちるのが見えた。
…しまった。泣かせちゃった。
いつもならともかく、今は泣かせたかった訳でも困らせたかった訳でもなかったんだけどなぁ。
さて、どうやって慰めようか―――と、思案した時だった。

「…っ、ちが…うん、ですっ…。」
 違うって、何が?
僕が思った言葉のまま聞き返すと、千鶴ちゃんは涙を拭きながら俯いてふるふると頭を横に振った。僕に何かを伝えたいみたいだけど、涙がなかなか止まってくれないらしく、細い指で頻りに涙を拭いている。何も言わずに彼女が落ち着くのを待っていると、小さな頭がゆっくり上がってきて、涙の跡を残した顔が僕の方に向けられた。
彼女の長い睫が濡れて、夕暮れのオレンジの光にキラキラと反射している。大きな瞳にはまだ涙が滲んでいて、泣くのを必死で堪えているのがよく分かった。
「確かに、先生方とか…剣道部への皆とか…用意して、きましたけど。でも、それよりも…ずっとっ………に、渡せなかった…事が……。」
涙に掠れた彼女の声はとても小さくて、上手く聞き取れない。肝心の部分さえも途切れ途切れで、最後の部分はついに尻すぼみになってしまった。堪えきれなくなったのか、千鶴ちゃんはまた悲しそうに顔を俯かせていく。
 …ちょっと待った。
今、誰の名前を口にした?最後のところで、誰かの名前を言ったよね?
―――あぁもうっ、ちょっとコレ、邪魔っ!
僕は、彼女の机の上にある紙袋を両手で掴んで、どさりと隣の机に置くと、座っている椅子を軽く持ち上げて、出来るだけ彼女に接近した。机を挟んでいるから密着する程じゃないけれど、それでも息がかかる位の至近距離だ。
「ねぇ、千鶴ちゃん。」
小さく縮こまっている千鶴ちゃん両肩に、そっと手を置いて彼女に声をかけた。千鶴ちゃんは俯いたまま、ぴくりと身体を強張らせる。でも、こっちを見ようとはしない。
「今…最後のあたりで、誰かに渡せなかった…って、言ったよね?」
「…」
「それって…誰の事?名前を言った訳だから、皆とは区別したい人なんだよね?もしかして、君の…好きな人?」
「…」
千鶴ちゃんは、何も言わない。顔を俯かせたまま首を振っては、悲しそうに肩を震わせているだけだ。
「どうして…何も答えてくれないの?僕の…知らない人?学校内で渡したかった訳だから、学校の関係者だよね?」
「…」
やっぱり千鶴ちゃんは、何も答えてはくれない。強張っている小さな肩が、「言えない」と無言で拒否しているようだった。
 あぁ…何で僕は、こんな質問をしているのかな。
こんな形で、千鶴ちゃんが誰かを想っているだなんて…知りたくなかったのに。
でも、このまま有耶無耶にするのもごめんだ。彼女の想い人が誰なのかを確かめないと、そいつと戦う事すら出来ないんだから―――。

「……です。」
小さな唇から、震えるような声が漏れたような気がした。僕が「え?誰?」ともう一度問いただすと。
「ですからっ……沖田先輩です!」
「……僕?」
自分でも呆れてしまいたくなる程に間の抜けた声が、僕の口から零れた。千鶴ちゃんは真っ赤な顔をしたまま、こくこくと何度も「肯定」の頷きを繰り返している。
―――自分でも、馬鹿だと思う。
そりゃあ千鶴ちゃんだって、目の前にいる本人に「特別な相手は誰か」と問いただされて「貴方です」は、恥ずかしいに決まってる。さすがに、無理やり言わせてしまったのは可哀想だったかな、と少し後悔した時だった。
「…ちょっと待って、千鶴ちゃん。僕、君の目の前にいるじゃない。今が、その渡すチャンスなんじゃないの?」
僕が「喜んで受け取るから、頂戴」と両手の平を広げてアピールすると、千鶴ちゃんは更に困ったように眉をハの字に下げて「駄目なんです」と大きく首を振った。
「…何でさ?」
「だって…そんな事をしたら、校則違反になっちゃいます!」
「…はぁ?」
彼女の主張は、「今ここで僕へのチョコを渡してしまったら「校則違反」になってしまうから駄目」なんだそうだ。自分の所為で、僕に校則違反をさせたくはないらしい。全く…真面目にも程がある。風紀委員の一君と良い勝負だ。
「えっと…君の気持ちは、すごく嬉しいんだけどさ。僕の遅刻歴とか、服装違反歴とか、知ってるでしょ?物凄く今更だと思うんだけど。」
「でっ…ですから、尚更なんです!違反行為はさせられませんっ!」
 …そんな真っ赤な顔をして、涙目で言われてもなぁ。
可愛いだけで、ちっとも怖くないんですけど。むしろ、もっと苛めたく―――いや、それはさすがに不味いか。
千鶴ちゃんがそうくるなら、僕は違う手で攻めるしかないよね。

「分かった。じゃあ、帰ろうか。」
僕は明るい声で椅子から立ち上がると、自分のカバンと隣の机に置いておいた青い紙袋をひょいっと手に取った。
「せ、先輩!?その紙袋は、あの……!」
「うん、分かってるよ。この紙袋の中に、チョコレートが入ってるんでしょ?」
慌てて自分の椅子から立ち上がった千鶴ちゃんに僕が笑顔でそう聞き返すと、千鶴ちゃんは頷きながらも「そうですけどっ…」と、反論しようとしてくる。
「うん、だからね。僕は今、チョコレートが入った千鶴ちゃんの紙袋を、君から無理やり奪い取りました。千鶴ちゃんの手からは、貰っていません。僕が、君から強引に奪い取っただけだからね。ほら、それなら違反にはならないでしょ?」
「えぇっ!?」
うん、予想通りのリアクションだね。まぁ、当然だろうけど。
だってこうでもしないと、ある意味頑固で真面目な千鶴ちゃんのチョコレートは、僕の手には入りそうもないんだもの。仕方ないよね?
「あの無茶な校則は「生徒間の菓子類の交換・配布の一切を禁ずる」でしょ?「強奪」は禁止事項に入っていないし、別に良いんじゃない?」
「そんなの、こじつけじゃないですかっ…!」
「こじつけだろうと屁理屈だろうと、別に何でも良いよ。僕は、君からのチョコレートが手に入れば、あとはどうでも良いし。でも、真面目な君には違反させたくないから。まぁ僕は、土方さんが言い出したあの禁止令に従うつもりなんて最初からなかったから、そのあたりは気にしなくて良いよ。」
千鶴ちゃんは困り顔で「気にします~!」と言いながら、僕から紙袋を取り上げようと僕のベージュのセーターを引っ張ろうとしてくる。僕は彼女の手を引っぱると、自分の方へと引き寄せた。千鶴ちゃんの小さな身体が、僕の胸のあたりにとすん、とぶつかって止まる。
「お、沖田先ぱっ…」
「それと僕…案外、独占欲が強いんだよね。君が作った物を、僕以外には食べさせたくないんだ。それが、他の奴の為に作った物でもね。」
低めの声でそう言った僕の言葉に、千鶴ちゃんは真っ赤な顔をして身体を固まらせている。
 …勝負あり、かな?
心の中でほくそ笑んでいると、千鶴ちゃんは顔を赤らめたまま上目遣いで「沖田先輩は、狡いです」と睨むように見つめてきた。
まったく…わざとじゃないんだから困るよね、本当にさ。
「だって、こんな僕が良いんでしょう?じゃあ、仕方ないよね?」
僕は、胸の奥で大きく鳴った鼓動を隠すように笑いかけると、紙袋とバッグを片手に彼女の手を引いて教室を出た。
いつもは嫌いなバレンタインも、千鶴ちゃんからチョコレートが貰えるのなら楽しく思えるんだから、僕も現金だよね。


「…あ、そうだ。千鶴ちゃん。」
「はい。何ですか?」
「まだ、ちゃんと言ってなかったよね。ごめんね。僕も、君が大好きだよ。」
「!」
突然降って沸いたみたいな僕からの返事に、千鶴ちゃんは大きな瞳を更に大きく見開いて、その場に固まった。
真っ白な筈の千鶴ちゃんの顔は、夕暮れのオレンジ色とは違う赤みを帯びていて。
これから一変するだろう学校生活が楽しみで、「早く明日にならないかなぁ」と熱の灯る彼女の小さな手を取りながら、僕は上機嫌で帰り道を歩いた。


-了-

――― あとがき ―――
このお話は公式サイトで「クリスマス禁止」というお話があったので、「バレンタインも禁止なんじゃないの!?」と思ったのが、「SSV」を作ったきっかけです(当時はSSLゲーム化の話すらありませんでした)。

沖田さんの場合、「好きでもない女性から一方的に気持ちを押し付けられたり、自分のペースを乱されるのは好きじゃないかもしれないなぁ」と思ったのがきっかけでした。
そして「はぁ?禁止令?何ソレ、おいしいの?土方さんの発案したものに、僕が従う訳ないでしょ?」と、暴君になってもらいました。何となくそうなるかな、と思ったのでw

「当日いきなり言い渡されてしまった禁止令に凹んでいる彼女のところへ、様子を見に行く…」というお話にしました。
彼は、気まぐれ屋さんでSな意地悪さんですが、好きな女の子には振り回される年相応らしいところもあるんじゃないかな、と思いまして。
という訳で、よりによって「バレンタインの当日、彼女に好きな奴がいるという事が発覚した」という、普通の男の子ならショックを隠しきれないであろう展開に直面してもらいました!

そしてチョコレートですが、彼なら土方さんの発案など何処吹く風…という具合に徹底的に無視するだろうと思ったので、あのような方法になりました。

サブタイトルの「may be a day like this once in a while」は、「たまにはこんな日があっても良いかな」「たまにはこんな日でも良いよね?」という意味だそうです。
バレンタイン嫌いの彼が、ちょっとこの日を好きになれた日、って事でw

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

タグ : SSV バレンタイン2011

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重篤レベルで嵌り中。
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Twitter: @to7mikaya_3na10
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